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「ーー確固たる証拠はない。 だが当家の執事たちが面立ちが王族のものであると……」
「面立ち……しかし元々ボスハウトには王家の血が流れている」
「ヴァルム殿の行動やオリバー殿の婿入りもある」
「ーー……オリバーは」
「ああ。 陛下の侍従だった男だ。 ーーそしてその陛下が、ヘルムント家への婿入りを……引いてはボスハウト家入りを許している」
「……ーー盛り返しただけならば、あの家にそこまでの思い入れは無いだろうな……?」
「現ボスハウト子爵がまだ使用人であった頃から、ヴァルム殿は頻繁に王城へ足を運び秘密裏に陛下の執事長と会合している」
「ーー報告、か?」
「……ボスハウトだけの問題ならば、わざわざ秘密裏にはしないだろうし……ーーそもそもボスハウト側が一方的に望んだとしてもトビアス殿が付き合う謂れはない」
「ーー王族の行方だからこそ……」
「……証拠はない。 だが……この問題は証拠なんて関係ないんだ」
「……関係、無い?」
「ーー陛下がお認めになっているかどうかだ。 あの一家が陛下にとって分家の一つに過ぎないのか、それとも……幼き頃にお慕いしていた叔母君の忘れ形見たちであるかどうかだ」
「だが、いくらなんでも証拠が無ければ……」
「ーーなにも王族に引き立てるつもりはは無いだろう。 ボスハウト家の問題もある……だが」

 いいにくそうに言葉を切り軽く息を吐き出すフィリップ。

「……だが?」
「ーー少しの気配り、少しの配慮、ほんの少しの贔屓……かの方がボスハウト家へ送るそれらのを誰が止められる?」
「……ボスハウトは敵になりえる、か?」

 ゴクリと唾を飲み込みながらたずねるレオン。

「……無いと思いたい、というのが本音です。 少なからず恩もある……レジアンナもリアーヌ嬢と良い関係を持っている」
「ーーそうだな」

 レオンは、きっと私も……と心の中で呟きながら小さく頷いた。

「しかし……」
「ああ。 ……しかし、だな」
「ーー彼女はギフトコピーできる」
「……ーーできてしまえば……そしてその気があるならば王座にすら手が届く……」

 レオンは手をきつく握り締めながら、窓の外の景色を睨みつけるかのようにキツい視線を送っていた。

「ーーサロンでも言ったがもう一度言う。 かの家はなにをもって良しとするのか予想ができない。 ……できうる限り友好な関係性を作れるよう心がけよう」
「……ーーサロンにも顔を出さない嫡男とか?」

 フィリップの言葉にレオンは呆れたように言い、詰めていた息を全て吐き出すかのような大きなため息をついた。
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