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 ゼクスと向かい合っているリアーヌは、その隣でビアンカが静かに頭を抱えた気配を感じ取っていた。

「えっとねぇ……?」
「……戦争はよくなくはない……?」

 呆れをごまかすようにゼクスが呟き、リアーヌが答えを探るように曖昧な返事を返す。

「ーーうん。 大丈夫だよ。 だってリアーヌはSクラスにちゃんと上がれたじゃないか。 君が頑張りやなことはちゃんと知ってる」
「えっ⁉︎ 私、戦争の勉強までするんです⁉︎」

(ラッフィナートは死の商人にまでなろうとしている⁉︎ あ、でもサンドバルからの道って軍事用なんだっけ……?)

「ーーいい加減その口を閉じて、ゼクス様は、かの方の協力をあまり必要となさっていないってことだけ、その頭に入れておきなさい?」

 どこか疲れた様子のビアンカの言葉を咀嚼しながら、リアーヌはゆっくりと首をかしげ、自分にとって一番重要な情報の確認をとった。

「……それで戦争の勉強は?」
「いい加減、戦争からは離れなさい⁉︎」
「ええっ⁉︎」

(じゃあ、今の今までその話題だったのに⁉︎)

 そんな二人のやりとりに、クスクスという、ごくごく小さな笑い声がそこかしこから聞こえ、リアーヌの背後からはポソリと「比喩かぁ……」と言うオリバーの呟きが聞こえて来た。
 その声をはっきりと聞いたリアーヌが、そろり……と背後のオリバーを伺おうとするとーー

「ーーその場合、ラッフィナートも降りるーーと捉えても?」

 フィリップが小さく咳払いをしたのち、ゼクスにたずねる。

「あー……実家の判断までは……ーーけれど、商家なんて信用第一なんで……あんまり約束を破られる方は……ね?」

 軽く首をすくめ、家族たちも今回の対応に怒りを感じていることを仄めかした。

「……男爵は是が非でも手に入れたがると思っていたのだがな?」

 フィリップは意味ありげにリアーヌに視線を流しながらゼクスの反応を伺う。
 ゼクスはその視線の意味に気がついていたが、リアーヌ自身に気がつかれることを恐れ、冗談めかした答えでごまかした。

「いやー、うちのような他の方々に睨まれないようにするので精一杯ですよー。 人のやっかみほど恐ろしいのはありませんから。 元々、友好関係を作っておいて、いざと言う時はーーと考えていたもので?」
「ーーあ、雇うつもりはなかったんですね?」

 ゼクスの言葉にリアーヌが反応し、その答えにゼクスが再び生ぬるいを作った。

(……あるぇ? もしかしなくても私ってばまた呆れられてます……⁇)

「ーーあのねリアーヌ?」
「……はい」
「一般的に、貴族のご令嬢は就職先なんて探さない」
「ーー確かに?」
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