成り上がり令嬢暴走日記！

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「ーー……そしたら「わぁ！　ありがとうございます！」って着席ですよ……」

　ゼクスの呆れた声に、なんとも言えない沈黙の時間が流れた。

「……ーー本物のフォルステル家の代理人なんですわよね？」
「……さぁ？　その方は「代理で来た」とだけーーしかし招待状は持参しているんですから、無関係とは言えません」

　再び気まずい沈黙が訪れーーそれを回避しようとしたリアーヌがビアンカに囁く。

「ーーあのね？　代理で来たの、同じクラスのお友達だったの……」

　その小さな言葉に、ヒュッと息を呑む一同と、不愉快そうに顔をしかめるゼクス。

「それは……ーーだって、男爵のお誘いなのよ？」
「……だけど、その娘こが来ちゃったんだもん」
「ーーちなみにどこのお家の方？」
「えっと……」

（ーー知ってても良いよね？　自己紹介されたし、ユリアのお友達で結構一緒にいるし！）

「レーレン家……かな？」

　確認を取るようにゼクスを振り返るリアーヌ。
　ゼクスは気だるげな態度でため息混じりに頷いてみせた。

「……レーレンって、聞いたことありませんけれど……？」

　レジアンナがヒクリ……と顔をひきつらせながらたずねる。
　その言葉にリアーヌは肩をすくめながら困ったように答えた。

「……お父様は役場で働いているらしいよ？」
「……つまり？」
「……正真正銘、平民階級の単なる同級生、かな⁇」

　その言葉にお茶会の参加者から非難めいた吐息が混じり、それに加え、壁際に控える護衛たちからもザワッ……と困惑した空気が伝わってきた。

　ーーゼクスは学生とは言え、れっきとした現役の貴族だ。
　嫡男でも時期当主でも無く、現時点でラッフィナート男爵家の当主なのだ。
　たとえゼクスが貴族階級の末席の男爵であろうとも、たとえ守護のギフトを持っていようとも、一いちご令嬢が、礼儀もなにも知らない同級生に招待状を持たせ、茶会に乗り込ませていいわけが無いのだ。
　パワーバランスなどを全て排除し、その階級だけで見るのであれば、この場でもっとも身分が高いのは王族であるレオン、その次に来るのがゼクスーーラッフィナート男爵だった。
　ーーゼクスはれっきとした、貴族の一員なのである。

　フィリップやレジアンナはあまりの無礼さに言葉を失い、レオンやクラリーチェはその非常識さに信じられないものを見た時のような表情になっている。
　参加者の誰もが戸惑い、なにかを言いかけては口を閉ざし、ありえない……と首を振り合った。