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「ーーけれどその方、フォルステル家と取引のある家の方だったそうよ?」
「……呆れた。、そんなことも分からずに入学してきたってことですの⁇」

(耳がいてぇよ……ーー私もほとんど知らずに入学してきちゃったよ……ーーまぁ、ゲーム知識はあったし、ヴァルムさんからの授業をうっすらと覚えてはいたけど……ーーあれ? そう考えると、私この世界の常識を覚えるまでイジメの標的になって遠巻きにされてたの、幸運だったのでは……? ーーまぁ、全然喜べないけどー)

「大体、もう少し毅然とした態度であの方を拒否なさる方がいてもよろしいのに……」
「ーー本人の気持ちはともかく……やはり難しいのでは?」
「……守護のギフト持ちですものね?」
「ーー現状を訴えても、実家からはどうにかツテを作れないのか? とせっつかれるほどには魅力的ですわよね……?」
「あら、貴女も⁇」
「……どこも一緒ですわねぇ?」
「ーーそれで結局、あの方はどなたの派閥に入るんでしょうか……? それとも派閥をお作りに……⁇」

 参加者たちが好き勝手話し合う中、クラリーチェが首をかしげながらおっとりと質問を口にした。

(ーーそう言えばゲームで貴族同士の派閥云々って出てきて無いよね……? つまり、主人公は派閥に属さないし、作らない……ーーあ、それダメなやつだわ……)

「大方、それを餌に殿方を取っ替え引っ替えするつもりなんでしょう? ーー下手に属してしまえば近付き難くなる方も出てきますもの!」

 憤慨したように顔をしかめながら、吐き捨てるようにレジアンナが言った。

(……そこに関しては、多分なんにも考えて無いんだと思うけど……ーーでも、それって貴族的に相当NGな話なんだよねぇ……ーー繋がりやツテを大切にする貴族からすれば、派閥に属さずあっちをフラフラ、こっちをフラフラしている人はそうとう面白く無い存在な訳で……でもあの子ーーユリアはそれが許される。 ーー守護のギフトを持っているから……ーーだけど、やっぱり面白い話ではなく、こうして不満が溜まっていくと……)

 リアーヌは引きつった笑顔を浮かべながら参加者たちを見回す。
 するとビアンカと目が合ったので、小さく肩をすくめ、困っていることを伝えた。
 すぐさまビアンカからも同じような仕草が帰ってきて、リアーヌはビアンカもこの会話にあまり加わりたく無いのだと言うことを知った。

(……大体派閥云々の話はさぁ……ーー誰かが『お茶会とか主催したら? それが派閥を作るってことだよ!』って教えてあげないと……ーーきっとあの娘、そんな知識持ってないよ⁉︎ 大体、ゲームで派閥なんか持ってなかったんだから、あの娘、絶対に自分の派閥なんて作らないんだって‼︎)
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