535 / 1,038
535
しおりを挟む
ザームやオリバーは呆れたように肩をすくめ、ヴァルムやアンナは目だけ笑っていない笑顔をゼクスに向け、父サージュは面白くなさそうにキュッと眉を寄せていた。
「……おうリアーヌ、お前の祝いの菓子はどうするんだ?」
父からの質問にリアーヌはさらに顔を輝かせてパッとゼクスから離れると、嬉しそうに人差し指を立てながら元気よく答える。
「ショートケーキ! あ、でもたこ焼きとお刺身も食べたい‼︎」
ここぞとばかりに希望を出すリアーヌにアンナがすぐさま口を開く。
「お刺身はございません」
「……好きなものなんでも……」
「生物はいけません」
ピシャリと言われ、ショボンと肩を落とすリアーヌにオリバーが苦笑いを浮かべながら代替え案を出す。
「焼き鳥はいかがです?」
「ーーつくね! 軟骨入りで‼︎」
「かしこまりました」
すぐさま上機嫌になったリアーヌにオリバーは笑いを噛み殺しながら頭を下げた。
「ーーちょっとやるんだからから、俺にもよこせよ?」
すぐさま、つくねを一人で食うなと釘を刺すザーム。
「……じゃあ、一番上のトコ私のね?」
「はぁ⁉︎ てっぺんは俺のに決まってんだろ⁉︎」
「ズルい!」「ズルくねぇ!」と言い合いを始めた姉弟に、その話の内容がいまいち理解できなかったゼクスは不思議そうに首をかしげなぎら声をかける。
「上のやつは特別製なの?」
「うちのプチシュータワーは上から飴がかかってるんで、そこが一番カリカリなんですよ!」
(口の中で飴のカリカリとシューのサクサクとクリームのとろーりが一度に味わえちゃうんだから! サクとろだけでも十分美味しいけど、そこにカリカリが加わると幸福度跳ね上がるからねー。 ここは譲れない戦いなんですよ……!)
「一番うめぇトコは俺んだろ。 俺の祝いの菓子なんだから」
「そんなん横暴だし!」
また言い合いを始めてしまった二人を見兼ね、メイドの一人が声をかける。
「本日はお祝いの特別制ですから、シェフがはりきって全てのシューを飴でコーティングしておりましたよ」
その言葉にリアーヌたちは目を丸くして見つめ合うとほとんど同じタイミングでメイドをバッと振り返る。
そして確認をするように質問を重ねた。
「ーー全部?」
「……全部って全部⁇」
「はい」
子供のようなその反応にメイドは口元を若干もにゅもにゅと動かしながらも、にこやかな笑顔で答える。
そしてその返事に顔を見合わせた姉弟は、瞳を輝かせながら同時に口を開き「ふおぉぉぉぉぉっ⁉︎」と全く同じ奇声を発した。
「……おうリアーヌ、お前の祝いの菓子はどうするんだ?」
父からの質問にリアーヌはさらに顔を輝かせてパッとゼクスから離れると、嬉しそうに人差し指を立てながら元気よく答える。
「ショートケーキ! あ、でもたこ焼きとお刺身も食べたい‼︎」
ここぞとばかりに希望を出すリアーヌにアンナがすぐさま口を開く。
「お刺身はございません」
「……好きなものなんでも……」
「生物はいけません」
ピシャリと言われ、ショボンと肩を落とすリアーヌにオリバーが苦笑いを浮かべながら代替え案を出す。
「焼き鳥はいかがです?」
「ーーつくね! 軟骨入りで‼︎」
「かしこまりました」
すぐさま上機嫌になったリアーヌにオリバーは笑いを噛み殺しながら頭を下げた。
「ーーちょっとやるんだからから、俺にもよこせよ?」
すぐさま、つくねを一人で食うなと釘を刺すザーム。
「……じゃあ、一番上のトコ私のね?」
「はぁ⁉︎ てっぺんは俺のに決まってんだろ⁉︎」
「ズルい!」「ズルくねぇ!」と言い合いを始めた姉弟に、その話の内容がいまいち理解できなかったゼクスは不思議そうに首をかしげなぎら声をかける。
「上のやつは特別製なの?」
「うちのプチシュータワーは上から飴がかかってるんで、そこが一番カリカリなんですよ!」
(口の中で飴のカリカリとシューのサクサクとクリームのとろーりが一度に味わえちゃうんだから! サクとろだけでも十分美味しいけど、そこにカリカリが加わると幸福度跳ね上がるからねー。 ここは譲れない戦いなんですよ……!)
「一番うめぇトコは俺んだろ。 俺の祝いの菓子なんだから」
「そんなん横暴だし!」
また言い合いを始めてしまった二人を見兼ね、メイドの一人が声をかける。
「本日はお祝いの特別制ですから、シェフがはりきって全てのシューを飴でコーティングしておりましたよ」
その言葉にリアーヌたちは目を丸くして見つめ合うとほとんど同じタイミングでメイドをバッと振り返る。
そして確認をするように質問を重ねた。
「ーー全部?」
「……全部って全部⁇」
「はい」
子供のようなその反応にメイドは口元を若干もにゅもにゅと動かしながらも、にこやかな笑顔で答える。
そしてその返事に顔を見合わせた姉弟は、瞳を輝かせながら同時に口を開き「ふおぉぉぉぉぉっ⁉︎」と全く同じ奇声を発した。
11
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

メイドを目指したお嬢様はいきなりのモテ期に困惑する
Hkei
恋愛
落ちぶれ子爵家の長女クレア・ブランドンはもう貴族と名乗れない程苦しくなった家計を助けるため、まだ小さい弟の為出稼ぎに行くことにする。
母の知り合いの公爵夫人の力を借りて住み込みのメイドになるクレア。
実家である程度家事もやっていたり、子爵令嬢としての教育も受けてるクレアはメイドとしては有能であった。
順調に第2の人生を送っていたのに招かざる来訪者が来てからクレアの周りは忙しくなる。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

【本編完結】政略結婚お断り、逆境に負けず私は隣国で幸せになります
葵井瑞貴
恋愛
「お前は俺の『物』だ」――夜会で傲慢な侯爵子息テオに見そめられてしまった令嬢ソフィア。
女性を物扱いする彼との政略結婚から逃れるため、一人異国へ旅立つ――。
そこで出会ったのは、美貌の貴公子アーサーと個性豊かな仲間たち。
新天地で平穏な日々を送っていたソフィアだが、テオが追って来て国に連れ帰ろうとする。
さらに、祖国とリベルタ王国が戦争間近の緊張状態になり、ソフィアは貴族の陰謀に巻き込まれていく。
宿命としがらみ。貴族の思惑と陰謀。入り乱れる恋の矢印と絡み合う恋模様――。
主人公ソフィアを中心に様々な人の縁が広がり交わって、やがて一筋の明るい未来に繋がる。
これは、どんな逆境にも負けず、自分らしく生きることを諦めない、令嬢ソフィアが幸せになるまでのラブストーリー。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】ちびっ子元聖女は自分は成人していると声を大にして言いたい
かのん
恋愛
令嬢に必要な物は何か。優雅さ?美しさ?教養?どれもこれも確かに必要だろう。だが、そうではない。それがなければ、見向きもされず、それがなければ、壁の花にすらなれない。それとはなにか。ハッキリ言おう。身長である!!!
前世聖女であったココレットが、今世は色恋に花を咲かせようと思っていた。しかし、彼女には今世身長が足りなかった。
これは、自分は成人していると声を大にして言いたい元聖女のはじまりの話。
書きたくなって書いた、勢いと思いつきのお話です。それでも良い方はお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる