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 リアーヌは自分の考えに、思わずクスリと苦笑いを浮かべ、軽く息をつきながら次の授業の準備を始めた。

(ーー自分でも自分のハッキリしなさ具合に頭をかけるむしりたくなっちゃうけど……でも信じるつもり! 「信じてる」って言ってる間に悪役令嬢にされてポイッ、とかは絶対にイヤだから、場合によっちゃ全力で疑うだろうし、信じきれない時も出てきちゃうカモだけど……ーーあの時のゼクスを信じたい。 やった! って嬉し笑ったあの人を。 だから信じれる限りは信じたいーーたとえ……主人公がゼクスのルートを選んだとしても)

「ーーですがリアーヌにとっては、どうでもいいことですわね?」
「いや、どうでもいいとは……」

 考え中に話しかけられ、リアーヌはいつもの調子で言葉を返そうとしたが、その視線の先にあったビアンカの顔は、ゾッとするほどに冷ややかなものだった。

「ーーいまの貴女にAクラスに上がる以上に重要なことがあって?」
「ーーいいえ、ございません……」

 そう答えながらリアーヌは全力で首を横に振った。

 ーーなぜこんなにもビアンカの機嫌が悪いのかと……

(うん。 そうだね……もう分かってるかな? ーー花園での願掛けが『ビアンカと私は大親友だから、ずっと一緒だよ! 私がSクラスに上がれなかったらビアンカもAクラス残留で!』だったってことがバレたからだねっ! ーーあのトリプルデートのあと、レディアンナとの話の中で「次にまた三組で遊びに行った時は、私も願掛けに協力してあげてもよろしいわよ?」とチラチラされた時、なんの疑いも躊躇もなく「え、Aクラスに落ちちゃうかもだけどいいの?」って普通に答えてたよねー……息をするように、とぅるんと出てたよねー……)

 その当時のことを思い出し、遠い瞳をしながら窓の外に視線を移した。

(で、隣に座ってたビアンカには当然その言葉が聞こえていて……ーーそこからお話し合いですよ……あれ、本当に怖かったな……。 軽い気持ちや一瞬の安堵のために、あんなことするんじゃなかった……Sクラスに上がれなかったら絶交だ! とか宣言されちゃったし……絶交は絶対ムリだし、クラスが別れるのだって拒否だから……ーーいいよ! 分かったよっ! やっちゃうんだから⁉︎ また死ぬ気で頑張ればいいんでしょ⁉︎ ーー奇跡よ再び! 私の手元にっっっ! ……今回の座学だけ以前の勉強法を解禁しよう……ちょっとでも点数取りに行こう……)

 進級試験を目前に控えたリアーヌは、大きく息をつきながら、ノートも持つ手に力を込め覚悟を新たにしたのだった。
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