530 / 1,038
530
しおりを挟む
なかなか長続きしない甘い空気に、ゼクスは面白くなさそうに口を窄めながら頬杖をつき、窓の外に視線を流す。
そしてそのまま、グチるように話し始めた。
「大体、今日だって俺じゃダメだったの? 何でわざわざビアンカ嬢⁇」
「え、だって……ゼクス様はもうSクラスだし……悪いかなって」
「ーー悪いかな……?」
「はい。 嫌じゃありません? せっかくSクラスなのにAクラスに落ちちゃったら……」
リアーヌは口をモゴモゴさせながら「クラス落ちって思ってる以上にダメージ大きいって聞きますし……」と続けた。
「ーー待って? ……ん?」
「え⁇」
リアーヌの願掛け内容が『二人一緒にSクラス入り!』だと信じて疑わなかったゼクスは、噛み合わない話の内容に困惑し首を大きく傾げる。
「……願掛けだって言ったよね?」
「はい」
「……クラス分けの願掛けでしょ?」
「そうですね」
キョトリと不思議そうに受け答えをしているリアーヌに、ゼクスは心の中に湧き上がった疑問をぶつける。
どうか否定してほしいと願いながら。
「……もしかしてAクラス残留?」
「えっと……つまり、もちろん私だって無事にSクラスに上がれるのが最善だってことは分かってますよ?」
「うん」
「でも……もしもーーもしも、ですよ? 万が一にも私がAクラスに残ることになっちゃった場合は、ビアンカもAクラスに留まってくれないかなー……? なんて⁇」
「うわぁ……」
それはゼクス渾身の、ドン引きの「うわぁ……」だった。
「わ、私たちズッ友なんで! ニコイチっていうか……ーー片方だけSクラスとか、そういう関係じゃないんでっ!」
ドン引きされたことに多少のショックを覚えたリアーヌは、視線をキョドキョドと揺らしながら必死に言葉を重ねるが、そんな姿の彼女にゼクスは乾いた笑いを浮かべることしか出来なかった。
「……そ、それにほら、ただの願掛けって言うか……ーーそうだったら良いのになぁー? 程度のものですし⁉︎ グレードで言ったら下も下の願掛けですよ! 「空からお金降ってこないかなー……」的な⁉︎」
「…………一緒のクラスになれるといいね?」
「……はい」
かなりの間を置いて、絞り出すように言ったゼクスの言葉に、リアーヌは肩を落としながら頷き返すのだった。
「ーーあれ……? ゼクス様も願掛けしてくださる⁇」
さっきまでの会話を総合し、その結論に至り、呟くリアーヌに、ゼクスの顔が盛大に引き攣る。
「……俺がやりたいのは縁結びの願掛けであってね……?」
リアーヌと鍵をかけることはゼクス自身が望んだことではあったのだが、ここで安易に頷き、クラス落ちなどと言う目にあったら笑えない……と、ゼクスはやんわりと断りの言葉を口にした。
そしてそのまま、グチるように話し始めた。
「大体、今日だって俺じゃダメだったの? 何でわざわざビアンカ嬢⁇」
「え、だって……ゼクス様はもうSクラスだし……悪いかなって」
「ーー悪いかな……?」
「はい。 嫌じゃありません? せっかくSクラスなのにAクラスに落ちちゃったら……」
リアーヌは口をモゴモゴさせながら「クラス落ちって思ってる以上にダメージ大きいって聞きますし……」と続けた。
「ーー待って? ……ん?」
「え⁇」
リアーヌの願掛け内容が『二人一緒にSクラス入り!』だと信じて疑わなかったゼクスは、噛み合わない話の内容に困惑し首を大きく傾げる。
「……願掛けだって言ったよね?」
「はい」
「……クラス分けの願掛けでしょ?」
「そうですね」
キョトリと不思議そうに受け答えをしているリアーヌに、ゼクスは心の中に湧き上がった疑問をぶつける。
どうか否定してほしいと願いながら。
「……もしかしてAクラス残留?」
「えっと……つまり、もちろん私だって無事にSクラスに上がれるのが最善だってことは分かってますよ?」
「うん」
「でも……もしもーーもしも、ですよ? 万が一にも私がAクラスに残ることになっちゃった場合は、ビアンカもAクラスに留まってくれないかなー……? なんて⁇」
「うわぁ……」
それはゼクス渾身の、ドン引きの「うわぁ……」だった。
「わ、私たちズッ友なんで! ニコイチっていうか……ーー片方だけSクラスとか、そういう関係じゃないんでっ!」
ドン引きされたことに多少のショックを覚えたリアーヌは、視線をキョドキョドと揺らしながら必死に言葉を重ねるが、そんな姿の彼女にゼクスは乾いた笑いを浮かべることしか出来なかった。
「……そ、それにほら、ただの願掛けって言うか……ーーそうだったら良いのになぁー? 程度のものですし⁉︎ グレードで言ったら下も下の願掛けですよ! 「空からお金降ってこないかなー……」的な⁉︎」
「…………一緒のクラスになれるといいね?」
「……はい」
かなりの間を置いて、絞り出すように言ったゼクスの言葉に、リアーヌは肩を落としながら頷き返すのだった。
「ーーあれ……? ゼクス様も願掛けしてくださる⁇」
さっきまでの会話を総合し、その結論に至り、呟くリアーヌに、ゼクスの顔が盛大に引き攣る。
「……俺がやりたいのは縁結びの願掛けであってね……?」
リアーヌと鍵をかけることはゼクス自身が望んだことではあったのだが、ここで安易に頷き、クラス落ちなどと言う目にあったら笑えない……と、ゼクスはやんわりと断りの言葉を口にした。
0
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
[完結]私はドラゴンの番らしい
シマ
恋愛
私、オリビア15歳。子供頃から魔力が強かったけど、調べたらドラゴンの番だった。
だけど、肝心のドラゴンに会えないので、ドラゴン(未来の旦那様)を探しに行こう!て思ってたのに
貴方達誰ですか?彼女を虐めた?知りませんよ。学園に通ってませんから。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。
でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。
果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか?
ハッピーエンド目指して頑張ります。
小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる