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 なかなか長続きしない甘い空気に、ゼクスは面白くなさそうに口を窄めながら頬杖をつき、窓の外に視線を流す。
 そしてそのまま、グチるように話し始めた。

「大体、今日だって俺じゃダメだったの? 何でわざわざビアンカ嬢⁇」
「え、だって……ゼクス様はもうSクラスだし……悪いかなって」
「ーー悪いかな……?」
「はい。 嫌じゃありません? せっかくSクラスなのにAクラスに落ちちゃったら……」

 リアーヌは口をモゴモゴさせながら「クラス落ちって思ってる以上にダメージ大きいって聞きますし……」と続けた。

「ーー待って? ……ん?」
「え⁇」

 リアーヌの願掛け内容が『二人一緒にSクラス入り!』だと信じて疑わなかったゼクスは、噛み合わない話の内容に困惑し首を大きく傾げる。

「……願掛けだって言ったよね?」
「はい」
「……クラス分けの願掛けでしょ?」
「そうですね」

 キョトリと不思議そうに受け答えをしているリアーヌに、ゼクスは心の中に湧き上がった疑問をぶつける。
 どうか否定してほしいと願いながら。

「……もしかしてAクラス残留?」
「えっと……つまり、もちろん私だって無事にSクラスに上がれるのが最善だってことは分かってますよ?」
「うん」
「でも……もしもーーもしも、ですよ? 万が一にも私がAクラスに残ることになっちゃった場合は、ビアンカもAクラスに留まってくれないかなー……? なんて⁇」
「うわぁ……」

 それはゼクス渾身の、ドン引きの「うわぁ……」だった。

「わ、私たちズッ友なんで! ニコイチっていうか……ーー片方だけSクラスとか、そういう関係じゃないんでっ!」

 ドン引きされたことに多少のショックを覚えたリアーヌは、視線をキョドキョドと揺らしながら必死に言葉を重ねるが、そんな姿の彼女にゼクスは乾いた笑いを浮かべることしか出来なかった。

「……そ、それにほら、ただの願掛けって言うか……ーーそうだったら良いのになぁー? 程度のものですし⁉︎ グレードで言ったら下も下の願掛けですよ! 「空からお金降ってこないかなー……」的な⁉︎」
「…………一緒のクラスになれるといいね?」
「……はい」

 かなりの間を置いて、絞り出すように言ったゼクスの言葉に、リアーヌは肩を落としながら頷き返すのだった。

「ーーあれ……? ゼクス様も願掛けしてくださる⁇」

 さっきまでの会話を総合し、その結論に至り、呟くリアーヌに、ゼクスの顔が盛大に引き攣る。

「……俺がやりたいのは縁結びの願掛けであってね……?」

 リアーヌと鍵をかけることはゼクス自身が望んだことではあったのだが、ここで安易に頷き、クラス落ちなどと言う目にあったら笑えない……と、ゼクスはやんわりと断りの言葉を口にした。
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