527 / 1,038
527
しおりを挟む
吐き捨てるかのような反応を見せるリアーヌにゼクスは苦笑を浮かべることしかできなかった。
「だって……理想、とかは……」
(ーー私だって私のことを客観的に判断したりできるんですよ……?)
リアーヌからの疑わしげな視線にゼクスは首をすくめながら答える。
「婚姻関係を結ぶ条件や希望なんて、その家によって違うよ。 それに個人の希望だって当然違ってくる」
「だからって……」
「ボスハウト家は王家に連なる家ーーこの看板は大きいだろ?」
「……まぁ、確かに?」
(他の王家に連なるお家は、ガチで王家の血筋が濃ゆいお家になっちゃうもんねー……もれなく公爵家だし。 ……いくら超お金持ちでも平民の商家には嫁がなそう……)
「それに加えて結婚相手の家に力がありすぎるのも困っちゃう。 乗っ取られて食い物にされるなんてゴメンだし」
「ーーそこは問題ありませんね⁉︎」
なんの迷いもなく言い切るリアーヌに、ゼクスは曖昧な表情を浮かべて肯定することもそれについて発言することも控えたようだった。
「……あの時、素早く契約したのマジで英断だったと思ってる……ーーあとは……」
そう言いながらゼクスは言いにくそうに鼻をかきながら口をつぐむ。
しかし首を傾げながら話の続きを待つリアーヌの姿に苦く笑うと、小さく息をつきながら話の続きを喋り始めた。
「ーー俺の好みの問題として、ザ・お嬢様! な娘に来られても困るよなぁって思ってた」
「ザ・お嬢様……ーーレジアンナ的な?」
「ーー……そこはまぁ、ノーコメントだけど……ーー俺も家族もみんな庶民なんだよ、従業員も含めてね? ーーもっと言うならうちの客の殆どが平民なわけだ。 ……それなのに、周囲にマナーや立ち振る舞いを求める娘はちょっとね……?」
「あー……」
(確かにそれは色々疲れそう……)
「仕事して帰って、家でまで営業スマイルでいるのはゴメンだし」
「営業スマイル……」
「家にいる時ぐらい普通にしてたじゃん?」
「ーー普通?」
「言葉づかいもマナーも気にしなくて、一緒に肩の力抜いてくれるコが良かったんだよ」
「ーーいいんですか⁉︎」
ゼクスの言葉にリアーヌはかつてないほどに瞳を輝かせながらたずね返した。
マナーや立ち振る舞いにヘキヘキしているリアーヌにとって、その言葉は天使からの祝福のように輝きを持って聞こえていた。
「……リアーヌはアンナさんに怒られない程度でね?」
「ズルい⁉︎」
「いやいや、たとえ俺が許可したって、アンナさんは許してくれないって!」
「ーーそれは……確かに?」
面白くなさそうにブスくれながら同意するリアーヌの表情に、ゼクスはふふっと笑いを漏らす。
「だって……理想、とかは……」
(ーー私だって私のことを客観的に判断したりできるんですよ……?)
リアーヌからの疑わしげな視線にゼクスは首をすくめながら答える。
「婚姻関係を結ぶ条件や希望なんて、その家によって違うよ。 それに個人の希望だって当然違ってくる」
「だからって……」
「ボスハウト家は王家に連なる家ーーこの看板は大きいだろ?」
「……まぁ、確かに?」
(他の王家に連なるお家は、ガチで王家の血筋が濃ゆいお家になっちゃうもんねー……もれなく公爵家だし。 ……いくら超お金持ちでも平民の商家には嫁がなそう……)
「それに加えて結婚相手の家に力がありすぎるのも困っちゃう。 乗っ取られて食い物にされるなんてゴメンだし」
「ーーそこは問題ありませんね⁉︎」
なんの迷いもなく言い切るリアーヌに、ゼクスは曖昧な表情を浮かべて肯定することもそれについて発言することも控えたようだった。
「……あの時、素早く契約したのマジで英断だったと思ってる……ーーあとは……」
そう言いながらゼクスは言いにくそうに鼻をかきながら口をつぐむ。
しかし首を傾げながら話の続きを待つリアーヌの姿に苦く笑うと、小さく息をつきながら話の続きを喋り始めた。
「ーー俺の好みの問題として、ザ・お嬢様! な娘に来られても困るよなぁって思ってた」
「ザ・お嬢様……ーーレジアンナ的な?」
「ーー……そこはまぁ、ノーコメントだけど……ーー俺も家族もみんな庶民なんだよ、従業員も含めてね? ーーもっと言うならうちの客の殆どが平民なわけだ。 ……それなのに、周囲にマナーや立ち振る舞いを求める娘はちょっとね……?」
「あー……」
(確かにそれは色々疲れそう……)
「仕事して帰って、家でまで営業スマイルでいるのはゴメンだし」
「営業スマイル……」
「家にいる時ぐらい普通にしてたじゃん?」
「ーー普通?」
「言葉づかいもマナーも気にしなくて、一緒に肩の力抜いてくれるコが良かったんだよ」
「ーーいいんですか⁉︎」
ゼクスの言葉にリアーヌはかつてないほどに瞳を輝かせながらたずね返した。
マナーや立ち振る舞いにヘキヘキしているリアーヌにとって、その言葉は天使からの祝福のように輝きを持って聞こえていた。
「……リアーヌはアンナさんに怒られない程度でね?」
「ズルい⁉︎」
「いやいや、たとえ俺が許可したって、アンナさんは許してくれないって!」
「ーーそれは……確かに?」
面白くなさそうにブスくれながら同意するリアーヌの表情に、ゼクスはふふっと笑いを漏らす。
0
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる