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 ゼクスは、先ほどの村人たちとの話し合いの最中に聞いたリアーヌの話を詳しく聞こうと話題を変える。

「村外れにある原っぱで子供たちに遊びを教えているようです。 様子を見に行ったディルクの話では、お嬢様を中心に、たくさんの子どもたちが遊んでいると……」
「わー……目に浮かぶ……」

 弟がいるからなのか、元々子どもが好きなのか、リアーヌは子供の扱いに長けていた。

「それに、遊びに交えて数字を教えていくので、子供たちも楽しそうに学んでいるようです……ーーあの方はどんなことで楽しむ才能がおありですね」
「……それに関しては天才的でしょうね?」

 ゼクスたちは、ご令嬢らしからぬ態度で大きく口を開け、楽しそうに笑うリアーヌの姿を思い浮かべながら優しい表情で頷き合う。

「ーーさーてと、今日の予定はあらかた片付いたし……俺も学校の視察に行こうかなぁー?」

 大きく伸びをしながらそう言ったゼクスは、どこかソワソワしながら立ち上がる。

「ーーお手すきならば……」

 そう言いながら手元の書類に視線を落とすディーターにゼクスは慌てて声をかける。

「いやいやいや! それは明日やりましょ? 俺ここに来てリアーヌと全然話せてないんですよ⁇ そろそろ俺の顔忘れられちゃいますよー……」

 肩を落とし、情けない声を上げるゼクスに、クスリと笑ったディーターは肩をすくめながら言う。

「ーーまぁ、視察も大切ですね。 ……お供いたします」

 そう答えた理由は、視察後に打ち合わせがしたいからなのか、リアーヌの授業を見てみたかったからなのか……



「あ、男爵様だ!」
「男爵様ー!」

 そんな子供たちの声に、リアーヌはチラリと視線を上げ、その視界にゼクスとディーターを入れたリアーヌは、どこか期待のこもった眼差しをアンナに向ける。
 ーーが、アンナはジッと時計の針に視線を落とし続けるだけだった。

(ゼクスが来たのに⁉︎ ここは『お勉強は一旦中止してお茶にいたしましょうか』の場面じゃ無いの⁉︎)

 微動だしなかったアンナに恨めしそうな視線を送ったリアーヌは再びノートに視線を落とし、記憶だけを頼りにガリガリと文字を書いていく。

(子供たちは一から十まで数えられたらお菓子だったのに! 私もやれって子供たちに言われたから、ノリノリで十まで数えるつもりでいたのにっ! なんで私だけレポート書かされてるの⁉︎)

 リアーヌが心の中で不満をぶちまけていると、ゼクスたちがすぐそばまでやってきて、リアーヌたちのそばにいる子供たちに声をかけた。

「やぁ、みんな。 こんにちは」

 ゼクスの言葉に子供たちは、元気よく手をあげて挨拶を返していく。
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