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「再来年って決まりそうで安心したよー。 正直、寮探しやら水回りの工事やら終わらせるのに猶予が数ヶ月しかないの、厳しいと思ってたんだよねー」
「……水回り、ですか?」

 ディーターはゼクスの言葉にきょとりと首を傾げた。
 場所すら決まっていない口ぶりなのに、なぜ水回りの工事が決定事項なのか理解できなかったのだ。

「あ、寮自体が男女混合でね? でも風呂やトイレぐらいは別々にしないと、なにかあった時、親御さんたちに申し訳が立たないだろ?」
「……男女が一緒、なのですか?」
「ーーやっぱりマズい? リアーヌはカフェ務めのご婦人方がストッパーになるって考えみたいなんだよね……あ、あとニ階に女性の部屋を集めて、二階は男子禁制とかにしようとは思ってるんだけどね?」
「ストッパー……に、なりますでしょうか……?」
「……この村はみんなが顔見知りだろ?」
「そうですね。 顔を見ればどこの誰だかぐらいは分かります」
「加えて……あまり言いふらされたく無い想い出の一つや二つ、みんなが抱えてる」
「想い出……? まぁ、そうでしょうね?」

 話の流れについていけず首をかしげるディーター。
 ゼクスはその様子に親近感を覚えつつも説明を続けた。

「リアーヌ曰く、それらを全て把握してるご婦人がたに逆らうヤツは少ないだろうって……」
「……ーー把握……してるんでしょうねぇ……?」

 心当たりのありすぎるディーターは、その光景を心に思い浮かべるながら遠い目で呟く。

「……井戸端会議の議題なんてそればっかりだろうよね……?」

 まだ一ヶ月もここに滞在していないゼクスですら、その原因に心当たりがあった。
 ゼクスは小さく肩をすくめると、遠くを見つめ続けるディーターに同情的な視線を向けた。

「そして、そんなご婦人方が目を光らせてる寮で、不埒なマネなんかしちゃったら……ねぇ? コトによっちゃ家族共々村に居られなくなるってのがリアーヌの見立てだね」
「……迅速に話が回るでしょうね……?」

 疲れたような表情を浮かべ、やけに実感のこもった声で答えるディーター。
 もしかしたら過去に噂話の被害にあった経験があるのかもしれない。

「寮の管理や安全面を考えて、腕っ節に自信のある護衛ーーこれは出来ればこの村から雇いたいけど……住み込みだからねぇ? 家族も雇うって条件つければ引き受けてくれる人見つかるかなぁ……?」
「再来年であればあるいは……?」
「確かに。 その頃には村の人たちの気持ちも価値観も変わってるかもね。 ーーそういえばリアーヌが早速、学校の真似事を始めたって言ってたよね?」
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