成り上がり令嬢暴走日記！

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「ディーターかディルクとは明日も合うだろうからね、その時にでも聞いてみるよ」
「お願いします！」
「ーー他にアイデアはある？」

　ゼクスはリアーヌが思いつく限り、その全てのアイデアを聞き出そうと、内心で手ぐすねを引きながら笑みを深くした。

「あとはお店やお家が忙しい時、ちょっと手を貸してほしい時の手伝いーーとかでしょうか？」
「……家の手伝いーー使用人のような？」
「そこまでカチッとしたのではなくーーお産の時、親戚が手伝いに来てくれたーーとか、不幸があった時手伝いに行くーーとかの延長線と言いますか……」
「それは……今までお金を払ってなかったことだろう……？」

　ゼクスは眉をひそめながら、言外に「わざわざ金を出して人を集める奴がいるのか？」とたずねていた。
　リアーヌはそんなゼクスに肩をすくめながら答える。

「でも、それだってちゃんと礼金包むんですよ？　『今回は助かったわー。　これで何か美味しいものでも食べて？』とか言いながら」
「そう……なんだ？」

　ゼクスはリアーヌの言葉に目を丸くしながらたずねかえす。
　貴族ではないものの、その辺の貴族よりも裕福なラッフィナート邸には多くの使用人が働いているため、そのような庶民の事情は全く知らなかった。

「いくら大変な時だって、親戚だって、なんの気も使って貰えなかったら、そうそう何回も手助けなんかしてくれないですよ？」
「……そうなんだ？」
「他の人はちゃんと貰ってるーーとかいう状況なら余計ですねー」
「……確かに？」

　ゼクスはリアーヌの話を聞きながら（あ、その辺は商人並みにドライなんだな……？）と謎のショックを受けていた。
　幼い頃から商人としての教育を受け、勉強をしてきたゼクスは、平民たちの損得抜きで助け合うような関係性に、少なからず憧れを抱いていたようだった。

「あ、学校的なものって出来ませんかね？」
「あー……学校ねぇ……？　やったほうが良いのは分かってるんだけどねぇ……？」

　リアーヌの言葉に、ゼクスは言いにくそうに答えた。
　学校を運営するならば金がかかる。
　そして教師も集めなくてはならない。
　まだまだ軌道に乗ったとは言えないこの村の運営状況で、そんな金食い虫となる学校を作る気にはなれなかったのだ。
　そんなゼクスの考えを読んだのか、リアーヌは慌てたように言葉を重ねた。

「あの学校っていうか、村の子供たちを集めて見張ってる所とかで良いんです！」
「どういうこと……？」

　リアーヌの話す内容が、自分の想定していた学校とは結びつかず、ゼクスは訝しげにたずねかえした。