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「お嬢様に喜んでいただけるよう、皆で考えたんです」

 村長の息子であるディルクが、にこやかに言った言葉に、リアーヌの顔がぱあぁぁぁっと明るく輝く。

「私のためのケーキ⁉︎」

(実はちょっと憧れてたんだよね! 私のために作られたケーキとか、最高じゃん! しかもこんなに美味しそうだしっ!)

「じゃあ……早速一口どうですか、お嬢様?」

 ゼクスはそう言いながら自分の前に置かれたケーキを一口すくってリアーヌの前に差し出した。
 なんの躊躇なくそれを口に入れ、瞳を輝かせるリアーヌ。

「ーーこれ、中にもトロトロの栗が入ってます! 美味しい!」

 リアーヌの言葉にホッと胸を撫で下ろすディルク。
 そして嬉しそうに微笑みながらリアーヌが食べている姿を眺めている。

「俺も食べたいな?」
「はい、どうぞ」

 ねだるようなゼクスの視線に、やはりリアーヌはなんの躊躇も見せずに、自分ケーキを掬うとゼクスに向かって差し出すーー
 二人の関係性はゼクスが思っている以上に深まっているようだった。

「……うん。 美味しいね?」
「はい! これもカフェに置いていいですか⁉︎」

 リアーヌはディルクのほうを向きながらたずね、その質問にすぐさま「もちろんでございますとも!」と二つ返事が返ってくる。

「いいですよね?」

 その返事に笑顔を浮かべたリアーヌはゼクスに向かって首を傾げる。
 言葉ではたずねているものの、その本心では断られることなど万に一つもないと信じきっている様子だ。

「もちろん。 とっても美味しいし……リアーヌのケーキだからね?」

 ゼクスとしても当然断るつもりなどなく、上機嫌なリアーヌをニコニコと見つめながら答えた。

「えへへー。 またカフェのメニューが増えますね!」
「だね? たくさん増やそうね⁇」
「はい!」

 リアーヌたちがそんな会話をしつつ、ケーキに舌鼓を打っていると、応接室のドアの向こうが、ガヤガヤと騒がしくなり始めた。
 そして少しの時間を置いて、村長のディーターが応接室の中にやってくる。

「各代表が集まりましたので、お二方の宜しい時に会議を始められます」

(ーーえ、もう会議を始めるの? これって『新しいケーキ作ったから食べてみてください!』ってだけの場じゃなかったんだ⁉︎)

「分かった。 ……リアーヌまた相談役になってくれるかい?」
「えっと……」

 迷うそぶりをみせるリアーヌにゼクスはすぐさま言い募った。

「前みたいに思いつくまま、自由に喋ってくれて構わないからさ?」

(なら簡単そうだけど……ーーそろそろ『言う通りにしたのにうまくいかない!』って苦情とかがきてしまいそう……)
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