成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

文字の大きさ
上 下
481 / 1,038

481

しおりを挟む
 そのブローチを見つめながら、リアーヌは今度はハッキリとため息を漏らしてしまった。

(……いや、これ無くしたらどうするのかと。 私の小物を無くすスキルを舐めないでいただきたい! こんなブローチなんか、ストンッコロコロー……で一発よ。 下を向いた時にはもう見失ってるね! どんなのだかは覚えてないけど、それでも数多くの、ストラップの飾りや缶バッジを無くしたことはちゃんと覚えてる! イヤリングや指輪ですら気が付かないうちに無くしてた記憶だってあるんだからねっ⁉︎)

「お似合いですよ、お嬢様」
「本当! お綺麗ですわ」

 支度が済んだのか、口々に褒めてくれるカチヤさんたちのお世辞に愛想笑いで答えながら、リアーヌはドレッサーの鏡越しにアンナに向かい真剣な表情で言う。

「ーー万が一にもこれを落とすようなことがあったら必ず拾ってください……」
「まぁ! そこまでお気に召したんですね⁉︎」
「それはそうよ! とっても素敵なブローチですもの!」

 リアーヌの発言の意図を少々勘違いしたカチヤとコリアンナはキャイキャイと楽しそうな声で話し合う。

「ご安心を。 必ずお守りいたします」

 はしゃぐ二人とは対照的に、アンナは至って真剣な表情でリアーヌを安心させるように大きく頷きながら答える。

(やっぱり頼りになるのはアンナさんなんだなって……)



 ゼクスと合流し、商船が多数止まっている船着場のあたりを散策していると、仕事中であろうテオとバッタリ出くわした。

「おーおー! そうしてっと、どっからどう見てもお嬢様だよなぁ? うちの真珠もよく似合ってる」
「ありがとうございます」

 豪快に笑いながら褒め言葉を口にするテオに、リアーヌはまんざらでもない様子で答えた。

「そりゃ俺の見立てですからぁ? 似合うのは当たり前でしょー。 ねー?」

 それなりの交流のあるゼクスは、普段よりも少しだけ砕けた様子でテオの軽口に答え、リアーヌに同意を求めた。

「すごく綺麗で気に入ってます!」

 ゼクスから送られたものは、大袈裟なほどに喜んでみせるのがマナーなのだと学んだリアーヌは、コクコクと大きく頷きながら嬉しそうにゼクスに笑いかける。
 目が合った二人はくすぐったそうにふふふっ笑い合い、また視線を絡ませ合うと、さらに微笑みを交わし合った。

「かー……甘酸っぱいねぇ……」

 そんな二人のやり取りに、テオが呆れた声をあげる。

「ーーやっかみとか、やめてもらえますー?」
「ケッ! オメェもさっさと結婚して尻に敷かれちまいな。 酢っぺぇ毎日が待ってるからよぉ」
「俺たちに待ってるのは甘いほうだけだからー」

 その言葉にリアーヌの指先がピクリと反応するが、リアーヌは微笑みながらその動きをごまかしてみせた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

メイドを目指したお嬢様はいきなりのモテ期に困惑する

Hkei
恋愛
落ちぶれ子爵家の長女クレア・ブランドンはもう貴族と名乗れない程苦しくなった家計を助けるため、まだ小さい弟の為出稼ぎに行くことにする。 母の知り合いの公爵夫人の力を借りて住み込みのメイドになるクレア。 実家である程度家事もやっていたり、子爵令嬢としての教育も受けてるクレアはメイドとしては有能であった。 順調に第2の人生を送っていたのに招かざる来訪者が来てからクレアの周りは忙しくなる。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

【本編完結】政略結婚お断り、逆境に負けず私は隣国で幸せになります

葵井瑞貴
恋愛
「お前は俺の『物』だ」――夜会で傲慢な侯爵子息テオに見そめられてしまった令嬢ソフィア。 女性を物扱いする彼との政略結婚から逃れるため、一人異国へ旅立つ――。 そこで出会ったのは、美貌の貴公子アーサーと個性豊かな仲間たち。 新天地で平穏な日々を送っていたソフィアだが、テオが追って来て国に連れ帰ろうとする。 さらに、祖国とリベルタ王国が戦争間近の緊張状態になり、ソフィアは貴族の陰謀に巻き込まれていく。 宿命としがらみ。貴族の思惑と陰謀。入り乱れる恋の矢印と絡み合う恋模様――。 主人公ソフィアを中心に様々な人の縁が広がり交わって、やがて一筋の明るい未来に繋がる。 これは、どんな逆境にも負けず、自分らしく生きることを諦めない、令嬢ソフィアが幸せになるまでのラブストーリー。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...