成り上がり令嬢暴走日記！

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　初めの頃は真珠商のテオが居付くな！　散れっ！　と追い払っていたのだが、持ち寄られた料理を美味しそうに頬張る姿を見て、だいぶ早い段階で諦めの表情を浮かべていた。

　さすがは商人とでも言うべきか、それからのテオの行動は早かった。
　集まってきた人々に声をかけ、テーブルや椅子を持ち寄らせ、露店商が見せてを出せる場所を確保した。
　すると、あれよあれよと言う間にその場所には露店が立ち並び、大勢の人たちがその宴会会場に詰めかけたのだった。

　人が多くなってしまったことでオリバーをはじめとした護衛たちは渋い顔を浮かべていたが、リアーヌが輝かんばかりの笑顔で「なんだかお祭りみたいですね⁉︎　私お祭り大好きです！」と発言したため、その口をキュッと閉ざした。
　しかし、そのまま宴会を続けるわけにもいかず、苦肉と策として、リアーヌの隣にアンナを、二人の背後に護衛を、ピタリと張り付かせることで一応の納得はできたようだった。

（ーーこの世界のお祭りってなんでこんなに楽しいんだろ？　おもちゃの出店なんかほとんど無くて、食べ物や飲み物ばっかりだけど……でもすっごい楽しいんだよねぇ……？　ーー前の私は宴会とか飲み会とか死ぬほど苦手だった記憶があるんだけど……ーーテレビもスマホも無いから、こうして皆で集まって、ワイワイご飯食べるのが娯楽として成立しちゃってるからなのかなぁ？　ーーあ、貴族様流の堅苦しい社交界を垣間見てしまったせいかもしれない……）

「嬢！　新鮮なサーモン貰ったぞー！　これでーー」
「生物なまものはご遠慮いたします」

　テオの言葉を遮るようにアンナがピシャリと言い放つ。
　瞳を輝かせかけたリアーヌだったが、アンナの言葉にシュン……と肩を落とす。

「サーモン……」

　そしてねだるような視線をアンナに向けた。

「ーー生はいけません」
「新鮮だって……」
「新鮮でも、です」

　意見を変えてくれそうにもないアンナに、リアーヌの肩はさらに下がった。
　その姿はそれを見ていた者たちの同情を誘いーー

「あんたちょっと炙っておやりよ」
「だな！　おいテオ、ちょっくらかしな！」

　露店の切り盛りしていた夫婦がそのサーモンに火を通すことを提案した。

「ありがてぇ！　嬢、待っとけ！　すぐに生じゃ無くなるからな！」
「ーーサーモン！」

　テオの言葉に、ぱあぁぁぁっと表情を明るくしたリアーヌに、周囲からクスクスという忍び笑いが漏れる。
　それは決して馬鹿にしているようなものではなく、幼子の愛くるしい様子を見守るような種類のものだったが、ここまで育ちきったリアーヌに向けられるものとして適切であるかどうかは不明だ。