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(え、話は聞き終わってますよね……? ーーまさか、まだレジアンナが満足するほどループしてないからまだまだ再放送は続くよ! とかじゃ無い……よね?)

 不吉な考えに顔を引き攣らせるリアーヌ。
 しかしレジアンナはそんなリアーヌにはお構いなしにお直しが終わると、廊下で待っているであろう愛しい婚約者の元に急ぐーー
 そして扉が開く寸前、再びリアーヌを振り返ると、イタズラっぽい笑みを浮かべながら口を開いた。

「それから、その機会にでもそのドレスのことを詳しく聞きましてよ? そんな素敵なドレスを独り占めだなんて、許しませんわ?」

 可愛らしいウインクを1つ送ると、軽やかな足取りでパーティ会場へと戻っていったのだったーー

(ーー……取ってつけたような、お褒めのお言葉ですこと……ーーというか、このドレスにはもう誰も触れないでほしい……お願いだから忘れさせて……)

 ーーそんな願いとは裏腹に、リアーヌのドレスは参加者たちの目を引く出来栄えであった。

 リアーヌが選んだ生地は、シルクのような上品な光沢でありながら、その光の反射加減で複雑な色合いを見せ、人々の目を引いていた。
 そしてこの布、ディスディアス王国と直接の国交を結んでいない国で作られたもので、この国ではほとんどお目にかかれない代物だった。
 そして、フリルやレースをふんだんに使い、たくさんの布を使ってどこもかしこもフワフワとさせるという、最近の流行りの形とは真逆のシンプルなデザインも相まって、リアーヌは本日、この会場内で一番の注目を集めていたのだったーー

(つーか……みんな珍しいものに目が無さすぎるんですよ……ーーこの布、ビアンカ先生が見たこの無いって興味を示すぐらいには珍しいものっぽいし、話しかけてくる人の殆どがどこで買ったん? って探りだったし……ーーゼクスが面白おかしくフォローしてくれなかったら、私の表情筋が肉離れを起こす危険すらあった……ーー相手に気が付かれないレベルの愛想笑いって、筋肉使うんだなぁ……ーー学園主催のパーティは予行練習みたいなもんだから気楽に参加できるものじゃ無かったのかと! レジアンナやビアンカも恐れる3年のお姉様方のあしらい方なんて、私習ってませんからね⁉︎)

「ーー挨拶とか多分終わって無いんだけど……ずっとここに居たいです……」

 カップを両手で持ったリアーヌは、その紅茶に向かい、願望を唱えるように小声で囁いた。
 そしてその願いが叶うように、と念じながらその中身を一気に飲み干す。

(ーー小学生の頃流行ったおまじない……ワンチャン効いたりしないかなぁ……? まぁ学校にはティーカップなんて無かったからみんなスープやシチューでやってたから、ご利益なんか全然なかったんだけどー)
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