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「ダンスならダンスだけでいいじゃないですか⁉︎ なんでずっと喋ってないといけないんですか⁉︎」
「実際のダンスでも楽しく会話できるように、でございますよ」
「じゃあなんでその会話の練習が「あそこの町で最近起こった事件はなんでしょう?」とか「この家の親戚はどの家でしょう?」とかのクイズなんですかぁ⁉︎」
「この程度の雑学は覚えていて損はありませんし、会話を盛り上げるきっかけにもなる場合が多いんですよ」
「ビアンカやゼクス様からは、言質とられないように笑ってごまかそうねって言われてますもんっ!」
「ーーいまはまだ、でございましょう? ゆくゆくは出来なくてはいけません。 お嬢様はラッフィナート男爵家の奥方様となられるのですから」
「そ、れは……」

(だから、たった今この瞬間にも、そうならない可能性が芽生えようとしているんだよなぁってことを考えてたんだもんっ! ーー絶対こっちの問題に対する心構えや言質を取られない訓練した方が将来の役に立つんだからーっ!)

 そう心の中では絶叫するリアーヌだったが、メイドにそう主張してみせるわけにもいかず、ぐぬぬ……と押し黙るしかなかった。
 そしてそのまま、メイドに促されるままにダンスレッスンを再開させたのだったーー

(ーーあの日の私……もしもこの声が届くのならザームから『身体強化』をコピーしてはいけません……汗だくになっても強化をかけているのですから……って一日中ダンスレッスンをさせられます……ーーいいですか、あの日の私! なにがあってもコピーしないでください……ーー頼むから聞こえてて! 私に身体強化を使わせないでっ‼︎)



 雪もちらつき始め、クリスマスパーティまではもうすぐーーとなった頃、ドレスの出来上がりの知らせを受けたリアーヌは、母・リエンヌと共に仕立て屋を訪れていた。

「ーーあら素敵に仕上がったわねぇ? リアーヌ貴女、私よりセンスが良いみたい」

 リエンヌは出来上がってきたドレスを前に、満足そうに頷きながら笑顔を浮かべた。
 そんなリエンヌの反応に仕立て屋のおかみさんも上機嫌で二人に話しかける。

「まぁまぁ! お嬢様のセンスの良さは奥様譲りでございますとも! しかし本当にお嬢様の見立ては素晴らしく、うちとしましてもご要望通りの出来栄えと自負しておりますわっ!」

 これ以上ないほど上機嫌な仕立て屋を横目に、リアーヌは目の前のドレスを見つめ、ヒクヒクと頬を引きつらせていた。

(やべぇよ……どうすんだよこのドレスーーえ、私? 私がこれを着るの⁇ クリスマスパーティだよ? ハロウィンじゃ無いんだよ⁇ なのに私がこれを着てパーティに出席するって話を今していらっしゃる⁇)
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