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 先程までの気合はどこかに消え失せたのか、リアーヌはキッパリとゼクスに言い放った。

(ビアンカが無理なら無理なのよ。 だって助けてくれる人がいないってことな
んだから!)

「うん。 うちとしてもチャレンジされても困っちゃうから……」
「……ーーじゃあ、私社交のレッスン取りやめても……?」

 どこか期待するようにリアーヌがゼクスに話しかけるが、その言葉にいち早く答えたのはゼクスではなくビアンカだった。

「そんなわけないでしょ」
「……でもほら、一応、婚約の条件に社交は自由にしていいって書いてあるわけで……」

 言いながらゼクスの顔を伺うように見つめるリアーヌ。
 見つめられたゼクスは曖昧な表情を浮かべながら困ったように口を開く。

「まぁ……罠を張られてそうな所には近づかなくても……ね?」

 言葉を濁しながら答えるゼクス。
 その様子にビアンカは大きくため息をつきながら呆れた様子を隠そうともせずにゼクスに向かって話しかけた。

「年に数度開かれる、王家主催のものはどうなさいますの? まさか陛下や王妃殿下に招かれて、欠席を許すとでも?」
「王妃⁉︎」

 ギョッと目を見開きながら答えるリアーヌに慌ててゼクスが話しかける。

「王妃だよね?」

 その様子に、あっ……と、気まずげな顔になったリアーヌはコクコクと頷きながら口元を両手で押さえる。

「……やっぱり行かなきゃまずいんですかね?」
「ーーまずい、かなぁ……?」
「そもそも呼ばれない可能性とかって……?」

 リアーヌの質問にゼクスはうーん……と唸りながら首を捻る。
 そしてチラリとビアンカを見て、質問を投げかけた。

「ーーどう思われます?」
「……50%程度なのでは、と」

 ビアンカの答えにゼクスは大きく息をつきながら「ですよねー……」と同意する。
 そしてリアーヌに向き直ると、質問に答え始めた。

「爵位だけで言うなら子爵だから、わざわざ声がかけられるとは考えにくい。 でもボスハウト家は王家に連なる家。 陛下の覚えもめでたい……可能性はその分高くなる」
「ええー……」

 本来ならば名誉であり是が非でも貰いたい王家からの招待を、顔をしかめ嫌そうな声をもらすリアーヌ。
 そんなリアーヌに苦笑を漏らしながらゼクスは言葉を続けた。

「リアーナの事情だけを考慮してくれるなら、そっとしておいてもらえるだろうけど……派閥争いとかもあるからねぇ……?」
「あー……」

 父親であるサージュから、派閥争いが面倒くさい、と聞いていたリアーヌは、沈痛そうな面持ちで頷きながら同意する。

(……あれ? 待って⁇ それってつまり……)
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