成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……ーーいいえ! やりますっ! ちゃんと出来るようになるって決めたんで、そういう誘惑はダメです‼︎」
「誘惑って……」
「せめてあと三つ……四つ程度、言葉を増やせたなら違和感なく会話をこなせるのではなくて?」

 そんなやりとりを見ていたビアンカはクスリと笑いながら言う。

「ーー本当? 本当にそのぐらいでなんとかなる⁉︎」

 思っていた以上に自分の発言に食いつかれてしまったビアンカは、少し身を引きながら答えを濁す。

「ーーあくまでも無難にこなせる……程度だけれどね?」
「あー……授業では、かぁー」
「いくら複数言葉を用意していたとしても、本物の社交で答えを決めているのは危険よ? 諸先輩方との原の探り合い、言質の取り合いですもの……ーーリアーヌ貴女、下手に努力するより今日のように笑ってやり過ごす方が良いのではなくて……?」
「ビアンカ……それはいくらなんでも……」

 ビアンカのあまりに直接的な言い分に、パトリックがたしなめるように話しかける。
 しかしーー

「ーー言質はマズい、ですよね?」
「……マズいね⁇」

 少々顔色を悪くしたリアーヌとゼクスは真剣な表情で意見を擦り合わせ始めた。

「ーーわ、私頑張りますね⁉︎」
「うん。 努力って大切だしとっても素敵なことだとは思うんだけど……ーーそのための手段として笑ってごまかすって方法もアリだと思うな……?」
「ええ……?」

(それが許されるならば、今のこの努力の意味ぃ……)

 不満げな空気を醸し出してゼクスを見つめるリアーヌに苦笑混じりのビアンカの声がかかる。

「貴女の気持ちも理解できますし、努力も知っているつもりよ? でもね、卒業した私たちが相手にするのは、そんな社交界で長年生き残ってきた方々なの。 状況が状況なら私だって言質を取られてしまうわ」
「またまたー」

 リアーヌはその言葉を冗談だと思い、ヘラリと顔を崩しながら答えるが、ビアンカは難しい顔つきのまま静かに首を横に振った。

「冗談でも謙遜でもなくて社交界のお歴々はやろうと思えばそのくらい朝飯前なの」
「……本当?」

 ビアンカの態度と周りの反応から冗談では無いのだと理解したリアーヌは顔を引きつらせながら確認する。
 そんな恐ろしい話は冗談であってほしいと願いながら。

「ええ」

 しかし帰ってきた答えはリアーヌの願いとは正反対のものでーー諦めきれないリアーヌは今度はゼクスに確認を取る。

「ーー本当なんですか?」
「……だからこそ貴族は顔をつないでコネを作って家同士のつながりを強化するんだ」
「ーーえっと……?」
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