成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……新参者の俺が言うのもなんですが……ーーだからこそ客観的な意見として聞いていただきたい。 ーー教養学科に手を伸ばすこと自体が間違いだったのでは?」

 そんなオリバーの言葉に、使用人たちはギョッと目を剥き、そして口々に反論を始めた。

「なんということを⁉︎」
「そうです! リアーヌ様は見事に合格なさったではありませんかっ‼︎」
「しかもAクラスです!」
「間違っているのは貴方では⁉︎」
「ーーやめなさい」

 ヒートアップする使用人たちを止めたのはヴァルムだった。

「ですか⁉︎」
「ーーオリバーが言っているのはそういう意味ではない」
「じゃあどんな意味だって言うの⁉︎」

 そう言い返したのはアンナで、感情が昂るあまり、仕事用の口調では無くなってしまっていた。
 今のこの部屋に、そんなことを気にする者はいなかったがーー
 
「ーー間違えたのは私たちだ」
「……え?」

 ヴァルムの沈痛な声に、激昂していた使用人たちの間に動揺が走り、オリバーはそっと瞳を伏せた。

「ーーお嬢様はご聡明でいらっしゃった……だから教養学科にすら手が届くと……ーー夢を見てしまったんだ」
「夢⁉︎ お嬢様は見事に合格したじゃない!」
「そうですとも!」

 ヴァルムを問い詰めるように、アンナたち、リアーヌの教師役を務めた侍女たちがヴァルムに噛み付く。

「見事、あなた方の期待に応えてーーですか?」
「そ……そうですとも! お嬢様は努力なさって! 実力で見事に合格なさったのです‼︎」

 その答えを聞いたオリバーは、その答えを鼻で笑いながら攻撃的な笑顔を侍女たちにーーここに集まった使用人たちに向けた。

「ーー実力? 見事……ですか⁇」
「私たちのお嬢様に含むところでもあるの⁉︎」

 その物言いに、オリバーの妻でもあるアンナは目を吊り上げ、言葉を叩きつけるかのように言った。

「ーー無いさ。 お嬢様な?」
「…………私たちにはあると言いたいの」

 アンナはギュッとスカートを握りしめ、絞り出すようにたずねる。

「ああ。 ……これは貴方たちの罪だ」

その言葉にヒュッと息を呑む使用人たち、しかし誰かが反論を返す前に、ヴァルムが重々しいため息と共に言葉を吐き出した。

「……そうなるのであろうな」
「父さん⁉︎」

 咎めるように名を呼ぶアンナに、ヴァルムはニコリと笑顔を浮かべながら言葉を紡ぐ。

「ーー嬉しかった……ーー心底嬉しかったんだ。 このボスハウト家のお嬢様が……ーー私たちがお仕えするお嬢様が教養学科へと入学できるかもしれないーー……こんな使用人冥利に尽きることは無い……ーーそんな夢を見てしまったんだ……」
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