成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「これなんかどう? リアーヌいちご好きだし」

 そう言ってゼクスが手に取ったのは、真っ赤でツヤツヤのいちごが乗る、美味しそうなタルトが描かれているスクラップブックだっあた。

(確かに美味しそうだけれど……ーーでも、ゼクスがこれ持ち歩いて、なおかつこれにスクラップしてるトコとか想像つかないんだけど……? あー、そういえばゼクスは確かアンティークなのものを好んでたような? イベントとかでのプレゼントは毎回アンティークのを選んでおけば問題なかったはず……ーーってことはつまり……⁇)

 リアーヌはきょろり……と、売り場を見回し、ビアンカが持っていたものよりも、よりシンプルでアンティーク調なものを売り場の片隅から見つけるとスッと手を伸ばしながら言った。

「これとか……どうですか?」

 ゼクスの反応を伺うように、やや顔を覗き込みながらたずねる。
 しかし、たずねられたゼクスの反応はリアーヌが予想していたものとは程遠いものだった。

「ーーもしかして俺に気をつかってくれてる?」

 苦笑いを浮かべながら困ったように首よ後ろを撫で付けるゼクス。

「……好みじゃありませんでした?」

(やっぱり金持ちだからアンティークが許せなかったり? そういうことなんです⁇)

好きなやつでいいんだって……ーーそれとも最近の流行り知らないの?」
「え……スクラップブック……ですよね?」
「ーー最近の男連中の中じゃ、いかにも女の子が選びました! ってデザインのスクラップブック持ち歩くのかステータスになってるんだよ」
「そんなステータスまで……」

(確かに、誇らしそうに小脇に抱えてる人多いとは思ってたけど……)

「だからリアーヌが気にいったのでやろう?」
「じゃあ……」

 そう言ったリアーヌは売り場に再び視線を戻し、今度は自分の好みに合ったデザインを探していく。

(あ、あの青い蝶々綺麗……)

 そう感じたリアーヌが手を伸ばしたのは、白地に青い花とそれに止まる青い羽が美しい一匹の蝶が描かれたものだった。
 リアーヌの手がそれに触れようとした瞬間ーーふとその隣のスクラップブックが目に止まった。

(あ……こっちのは夕日の海なんだ……)

 そこにはデフォルメされた夕日とオレンジに染まる海、そしてそこには黒い船が浮かび、浜辺には砂の城が築かれ赤い旗が誇らしげに刺さっていた。

(サンドバルで見た景色とはちょっと違うけど、あの時見た夕日もこんなふうに綺麗なオレンジだったなぁ……ーーいや、夕日って大体こんな色してるって話もあるか……)

「ーーそれ、サンドバルで見た夕日に似てるね?」

 隣からかけられた言葉にリアーヌは驚いて目を見開いた。
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