上 下
410 / 1,038

410

しおりを挟む
 国の王が暮らす場所が王城だ。
 そもそも、その王城の敷地が広い。

(シンデレラ城とか目じゃないほどにデカいし広いし……ーーあの広さは、東京ドーム何個分で表すサイズの広さだよ……ーー端っこに置き去りにされたら、自力では返ってこられないんじゃないかって程には広い……っていうか、一部に関しては庭じゃなくて森だと思ってる。 そんな馬鹿でかい敷地の例え4分の1とはいえ、ぐるりと外周を囲うように作られたのが、うちが管理しているベアトリアス花園ーーそりゃ広くもなりますわー)

「本当は小さく小分けにして、その間の道を馬車で行き来できるようにしたいみたいなんですけど……」

 そう言いながらリアーヌは困ったように肩をすくめた。

「ああ、テーマごとに分けて、道やゲートを新たに設けたいって話だったよね?」
「検討の余地もなく却下だったみたいです」
「ーーまぁ……そうなっちゃうよね?」

 そう答えながら、曖昧な微笑みを浮かべるゼクス。

 ボスハウト家が管理しているとはいえ、あくまでも花園なのだ。
 あまりコンパクトになってしまっては王家の威厳にも関わってくる問題になる。
 さらにいえば、王城のすぐ隣の敷地に馬車が何台も隠せてしまうような場所など、作らせる許可など出るわけがなかったのだ。

「父さんが、無理だろうなーって言ってたんで、みんなそこまで期待はしてなかったんですけど……」

(それでも母さんが、移動が楽になれば大儲けできるわ⁉︎ ってはしゃいでたから、お伺いを立てないって選択肢が父さんには無かったんだろうな……)

「あ、でも代わりに、花園の入り口を増やす許可が降りそうだって話ですよ?」
「え、本当に⁉︎」

 ゼクスはその言葉にギョッと目を剥きながら聞き返す。
 王城の安全面を一番に考えるならば、不審者が侵入する可能性のある入り口など、道路以上に増える可能性など無いと踏んでいたからだった。

「なんでも、管理を任せているのに案を否定してばかりだし、こちらの要望通り入場者も増やして見せ、その評判も良好であるというのにこの仕打ちはあんまりだろう、ってえらい人が言ってくれたみたいですよ?」
「……えらい人って」

 ゼクスはリアーヌの言葉からその言葉を言ったであろうに察しがついたのか、その頬を盛大に引きつらせる。

(ーーそんな言葉だけで入り口増やせるとか……ーーこの国で一番じゃなきゃ、絶対に無理だろ……)

「あー、うちの父さん、貴族の名前全然覚えてないんですよねぇ……」

 ゼクスの呟きをどう受け止めたのか、リアーヌは困ったように苦笑を浮かべながら前ぎわの生え際あたりをポリポリとかいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

処理中です...