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「ーー私の一番はミルクレープですわ」

 リアーヌが自分の成長に一人静かに喜んでいると、レジアンナが少し恥ずかしそうにポソポソと小声で言った。

「……はいはい。 スカーレットスカーレット」

 本当、隙があったらその話ぶっ込んでくるよねぇー……と、生ぬるい視線を美しく整えられたら庭の花々に投げつけながら、リアーヌはケーキを頬張った。

「グランツァのものでなくともよ⁉︎」

 リアーヌの反応にレジアンナは珍しくムッとしたように顔をしかめながら抗議するように言った。

「……そうなの?」
「ーーその、フォークで切る時の感触が面白いから……こんなこと言うと子供っぽいと思われそうですが……」

 レジアンナは家族からそう笑われたことを思い返しながら、恥ずかしそうに説明する。

「ーー確かに、独特の感触がしますわね?」
「ええ、フォークから伝わってきます」

 少女たちがコクコクと頷きながら同意すると、レジアンナはホッとしたように微笑む。

「そうなんですの! あの感触が好きなんですの」

(……ケーキを切る時の感触かぁ……ーー一刻も早く口に入れたいって願望しか無かったなぁ……? やっぱり生粋のお嬢様は、物事に対する感じかたからすでに違うもんなんだ……)

 リアーヌは感心したように話を聞きながら、もぐもぐとケーキを食べすすめていると、少女たちの視線がリアーヌのほうに向く。

「ーーリアーヌ様は凄いですわねぇ?」
「本当に! カフェ・サンドバルといえば、今王都で一番人気ですもの! リアーヌ様の発案だとお聞きしましたわ」

 リアーヌはいきなり話しかけられて、慌てている内心を隠すかのように、口の中のケーキを紅茶で流し込む。
 しかし謙遜する言葉を発する前に少女たちはさらにリアーヌを持ちかげる言葉を続けた。

「ベアトリス花園の鐘やグランツァもリアーヌ様の発案なんですって」
「まぁ! 素晴らしいですわ‼︎」

(……あれ? この話の流れは……ーーこの子たちが顔を繋ぎたいの、レジアンナじゃなくて私……⁇)

「あー……アイデアだけなんですけどね?」
「まぁ、ご謙遜が過ぎますわ? アイデア無しではどれも実現など致しておりませんのに……」

(……どうしよう。 ここまで褒められる想定なんかしてなかったんですけど⁉︎ 一回謙遜したら、そこで会話を終わらせてもらわないと私が困ってしまいますが⁉︎ ……え、これもう一回謙遜して良いよね? するよ⁇)

 ビアンカからのフォローが入らないことを、かなり不安に感じながらも、リアーヌは再び謙遜の言葉を口にするーー

 この会話にビアンカがフォローを入れなかったのには理由があった。
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