成り上がり令嬢暴走日記！

380

「あら、二人だけで内緒話なんて良くないわ？　私も仲間に入れて！」

　ぷうっと頬を膨らませ、ズイッと身体を前のめりにしながらレジアンナが要求する。
　えっと……と言い淀むリアーヌの足をビアンカがコツンと蹴り飛ばして、言葉の先を促す。

「流石にそれは……って思ったり、今のは大目に見られないなぁーって感じたら、そのときちゃんと言ってほしいなって……ーーすぐ謝るから」
「ふふふっ　ええ、よろしくってよ？　……でも困ったわ？」
「……言いにくい？」
「ーー他の方にいきなり呼び捨てにされたら、気分が悪くなる気がするの。　リアーヌの時はとっても嬉しかったけど……ーー不思議ねっ⁉︎」

　頬を染めながら楽しそうに伝えてくるレジアンナに反比例するように、その周囲の者たちは頬を盛大にひきつらせた。
　そして、そのほとんどの者たちが、自分だけは決して気やすい態度などは取るまいと心に誓うのだった。

「……すでに手遅れなんだねぇー？」
「ふふっそうね⁉︎　どうしましょう⁇」

　レジアンナは初めて自分で作った“友達”という存在に思いのほか興奮していて、その全ての会話を瞳をキラキラと輝かせながら楽しんでいた。

　ーーレジアンナにとって……ーー数多くのご令嬢たちにとって、友人とは、親が引き合わせるものなのだ。
　その爵位が高ければ高くなるほど、親が選別した者以外と友人関係になることは難しくーーそして親の爵位などにより、決してこの子に逆らうな、この子とは喧嘩をするな、などと言い含められることが多々見受けられた。

　……リアーヌとビアンカの存在を知らない頃のレジアンナであれば『こんな友人友達が欲しい！』などという願いは持たなかったのであろうが、リアーヌとビアンカの仲の良さは社交界でも話題に上がるほど稀有なものであり、ましてやレジアンナは入学当初からリアーヌとトラブルを起こし、その存在をよく知っていたのだ。
　その頃から、言いたいことを言いたいように言い合い、お世辞も無しに笑い合うリアーヌたちの関係が羨ましくて仕方なかったのだ。

　ーーつまり……レジアンナは初めての友達に浮かれきっていた。

「ねぇリアーヌどうしたらいい⁉︎」
「どうしたらって……ーーどうしよう？」

　リアーヌはビアンカ向かって首をかしげる。

「ーー知らないわよ……私を巻き込まないで⁉︎」
「そんな⁉︎」

　その会話は、小声でひそめられていたが、周りがシン……と黙りこくり、その存在感を消していたためか、レジアンナの耳にもはっきりと届いてしまったようだった。