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「ーーあー……さすがは、未来のラッフィナート夫人ですわね……?」
「え、ええ! そうね⁉︎ さすがの商才ですわ!」

 少女たちは口々にそう言いながら、互いに顔を見合わせ、愛想笑いでコクコクと頷き合う頷き合う。

(……これ、レジアンナが同意しとくれてなかったら地獄みたいな空気流れてたんだろうな……)

「……あんまり大っぴらにご商売のお話なんてするものじゃありませんわよ?」

 ビアンカにしては珍しく、他のご令嬢たちがいるにも関わらず、だいぶ砕けたた様子で肩をすくめながらリアーヌに話しかけた。
 そんなビアンカにつられるようにリアーヌはいつものように言葉を返していた。

「でも全然売れなかったら赤字待ったなしだよ?」

(赤字ってことはつまり借金ってことなんですよ⁇ 借金はダメでしょー)

「赤字……」

 そんな呟きが少女たちの口から漏れ出たのをリアーヌの耳が拾った。

「あっ……ーーえっと、その……」

(やば……純粋培養のお嬢様がたが困惑されておる……ーーそうか、やっぱり商売の話とかダメなんだ……)

「ーー全く、相変わらず常識がないわねぇ?」
「……ごめんなさい⁇」

 そう返しながら、リアーヌは内心で大きく首をかしげていた。

(……いくらなんでも今日のビアンカ、ちょっと気ぃ抜き過ぎじゃない……? 今の発言なんか、ビアンカのほうが悪く言われちゃいそうだけど……?)

 リアーヌがどういうことなのか、その視線を向けてたずねてみるが、ビアンカはそれには気がつかないフリをしてさらに口を開いた。

「皆様がたも、そのようにお気になさらないで? こちらの方商家に嫁ぐと決まった時から、家を繁栄させるのだと労働すら厭わない覚悟を決めていらっしゃるんですの」

 その言葉でリアーヌはようやく、これがビアンカからのフォローなのだと言うことに気がついた。

(ーーなるほど……? ビアンカさん、私の言動の一つ一つをフォローするんじゃなくて、私は商家に嫁ぐから! ってのをゴリ押す方向に舵をお切りになられたわけですね……⁇)

 ビアンカの言葉に笑顔で頷きながら、リアーヌは少しだけ心をささくれ立たせる。

(これは……ビアンカが楽しようとしてるだけなんじゃ……? ーーいや……こっちとしても、そのほうが楽だな⁇)

 このビアンカの言葉が、お互いにとってベストな案なのだと理解したリアーヌは、引きつりかけてた頬を叱咤して「そうなんですよー」と愛想を振りまいた。

「えっと……」
「そう、なのかしら……?」
「…………ねぇ⁇」

 リアーヌたちの会話に、どう答えるべきか迷う少女たち。
 二人の言い分は最もだと納得はしているのだが、だからといってここで同意してもいいものなのか判断出来ないようだった。
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