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「ーーまぁ、とっても美味しそうですわ。 ……こちらのオレンジはミストラル領のものなのですか?」
「ええ」
ビアンカの質問にレジアンナは胸を張り、少し誇らしげな様子で答えた。
「あそこのオレンジはどこのものよりも甘く味が濃いと有名ですから、食べるのが楽しみですね?」
「本当に」
パトリックが笑顔で言った言葉にビアンカも満面の笑みで答える。
そのあからさまな態度に、リアーヌはこっそりと笑いながら鼻や髪をいじる。
(将来の上司の奥さんになる人だもんねぇ……? そりゃこのお茶会における最上位のお客様なこと間違い無いよね……⁇)
一同がビアンカたちの会話に頷きながらチョコレートケーキに手を伸ばす。
それを見ていたレジアンナはモジモジとしながらも、意を決したようにフィリップに向かって口を開いた。
「あ、あの……私も手伝いましたの」
「ーーまさかこのケーキ作りをかい?」
レジアンナの視線やその言い方から、ケーキ作りを手伝ったのだと言っていると察したフィリップは、目を丸くしながら確認する。
「ええ。 本当にちょっとですけれど……」
「君が……⁇」
「ーーオレンジを乗せてオーブンに入れただけですけど……」
フィリップは真剣な顔つきで、ケーキとレジアンナを交互に見つめながら質問を繰り返す。
その様子に喜んではくれなかったのだ……と落胆するレジアンナ。
その言葉はどんどんと小さくなってゆき、そこ肩はどんどんと下がっていくのだった。
(ーーお料理したことないお嬢様が「頑張ってやった!」って言ってるんだから、その答えなんか「凄いじゃないか⁉︎」一択なんだよなぁ……⁇)
目の前で繰り広げられる会話に、リアーヌの眉がピクリと跳ね上がるのと、フィリップがガタリッと音を立てたのは同時だった。
「ーーオーブンだって⁉︎ 火傷なんてしていないだろうね⁉︎」
両手でレジアンナの両手を握り締めると、真剣な表情でその指の一本一本を確認し、ケガしていないか? 傷付いていないかを確認していく。
「……まぁ、私そのくらい出来ましてよ⁉︎」
眉を吊り上げて言い返すレジアンナだったが、握り締められたその手を振り払うそぶりもなく、口元はによによと笑いを堪えるように歪んでいるので、言葉ではどう言いながらも、心配されて嬉しく思っている様子だ。
「出来る出来ないの話ではないよ……ーーこの華奢な手にキズが付いてしまったら私はどうしたらいいか……」
「フィリップ様……」
(ギフトで治したらいいんじゃないですかねぇ⁉︎ 侯爵家なら治癒でも回復でも二、三人ずつ雇ってるんじゃないんですかっ⁉︎ ーーあー……もう……)
「ーーあまぁぁぁいっ‼︎」
「ええ」
ビアンカの質問にレジアンナは胸を張り、少し誇らしげな様子で答えた。
「あそこのオレンジはどこのものよりも甘く味が濃いと有名ですから、食べるのが楽しみですね?」
「本当に」
パトリックが笑顔で言った言葉にビアンカも満面の笑みで答える。
そのあからさまな態度に、リアーヌはこっそりと笑いながら鼻や髪をいじる。
(将来の上司の奥さんになる人だもんねぇ……? そりゃこのお茶会における最上位のお客様なこと間違い無いよね……⁇)
一同がビアンカたちの会話に頷きながらチョコレートケーキに手を伸ばす。
それを見ていたレジアンナはモジモジとしながらも、意を決したようにフィリップに向かって口を開いた。
「あ、あの……私も手伝いましたの」
「ーーまさかこのケーキ作りをかい?」
レジアンナの視線やその言い方から、ケーキ作りを手伝ったのだと言っていると察したフィリップは、目を丸くしながら確認する。
「ええ。 本当にちょっとですけれど……」
「君が……⁇」
「ーーオレンジを乗せてオーブンに入れただけですけど……」
フィリップは真剣な顔つきで、ケーキとレジアンナを交互に見つめながら質問を繰り返す。
その様子に喜んではくれなかったのだ……と落胆するレジアンナ。
その言葉はどんどんと小さくなってゆき、そこ肩はどんどんと下がっていくのだった。
(ーーお料理したことないお嬢様が「頑張ってやった!」って言ってるんだから、その答えなんか「凄いじゃないか⁉︎」一択なんだよなぁ……⁇)
目の前で繰り広げられる会話に、リアーヌの眉がピクリと跳ね上がるのと、フィリップがガタリッと音を立てたのは同時だった。
「ーーオーブンだって⁉︎ 火傷なんてしていないだろうね⁉︎」
両手でレジアンナの両手を握り締めると、真剣な表情でその指の一本一本を確認し、ケガしていないか? 傷付いていないかを確認していく。
「……まぁ、私そのくらい出来ましてよ⁉︎」
眉を吊り上げて言い返すレジアンナだったが、握り締められたその手を振り払うそぶりもなく、口元はによによと笑いを堪えるように歪んでいるので、言葉ではどう言いながらも、心配されて嬉しく思っている様子だ。
「出来る出来ないの話ではないよ……ーーこの華奢な手にキズが付いてしまったら私はどうしたらいいか……」
「フィリップ様……」
(ギフトで治したらいいんじゃないですかねぇ⁉︎ 侯爵家なら治癒でも回復でも二、三人ずつ雇ってるんじゃないんですかっ⁉︎ ーーあー……もう……)
「ーーあまぁぁぁいっ‼︎」
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