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(ーー王城での騎士志望なエドガーが、ザーム卒業までって……一年開いちゃうんだけどねー……本人はすぐ了承したって話だけど……ーー完全にエドガールートしっちゃかめっちゃかのお知らせよ……)

「ーーボスハウト家の執事のお眼鏡に叶うとは、さすがは実力者と言ったところかな?」
「相当に厳しい審査をなさると評判ですからねぇ?」

 フィリップの冗談めいた言葉に、パトリックががクスクスと笑いながら相槌を打つ。

 リアーヌも愛想笑いを浮かべ、肯定するようなそぶりを見せてはいたが、その心の中は(はたしてそれは評判なんですかねぇ……?)という疑問でいっぱいだった。

「ザーム様のご友人になる方だと、少々甘い採点になったりしたのかしら?」

 ビアンカが首を傾げながら発した言葉に、リアーヌは何も考えずいつものように返していた。

「いやぁ……? 相変わらずキッツイ質問したみたいだよ⁇」
「ーーキツいと言うかエグいと言うか……」

 エドガー本人からその時の話を聞いていたリアーヌとゼクスは、肩をすくめ合い苦笑を浮かべながら顔を見合わせ合う。

 ーーゼクスはリアーヌの口調が乱れたまま戻っていないことに気がついていたが、リアーヌとビアンカの会話であればフィリップが苦言を呈しにくいことをいいことに、自分もその会話に混じりフィリップの前でわざと言葉を崩してみせた。
 フィリップのほうも、その程度のこと他の誰でもあっても腹も立たないようなことだったが、唯一の例外であるゼクス
が実に楽しそうにニヤニヤとだらしない顔を浮かべながら嬉々として会話に加わってる様子に、ビキリとひたいに青筋が浮かぶのを自覚していた。

「……と言いますと?」

 その全てを見透かしていたビアンカだったが、個人的趣向により、素知らぬ態度を貫いて二人に話の続きを促した。

「自分のことや家族のこと、将来の夢なんかを聞いてーー最後の最後に聞かれた質問が『いざという時は主人の命と自分の命、どちらを守る?』だったらしいよ……?」

 リアーヌの答えにビアンカは細く長い息を吐きながら目を細めた。
 そしてなにかに気がつくと、眉間にシワを寄せながら口を開いた。

「……確か貴女の家の執事って……?」
「うん……ウソが分かっちゃうんだ……?」
「それはまた……ーーいえ、一応護衛扱いでの雇用ですものね……?」
「ーーでも護衛だって、命までは……って思っちゃうと思わない?」
「……まぁね⁇ ーーつまり、彼は嘘偽り無く主人の命だと答えたの?」

 目を大きく見開いて驚きながらビアンカは言った。
 出会って数日の、しかもまだ学生という若さでそこまで腹を括れる人物がいるとは信じられなかった。

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