成り上がり令嬢暴走日記！

347

（そう言えば、私がギフトをコピー出来るって話、学園の生徒や関係者には絶対バレないように気をつけろって散々言われてたはずなんだけど……ーーえ、まさか命に別状がある感じですか⁉︎）

　その可能性にリアーヌはギョッとしながら男子生徒の顔を見つめた。
　しかしその表情は、痛みを堪えるように歪んではいたが、顔色は正常で、呼吸もしっかりとしてい？。

（……まぁ、ですよね？　だって怪我したの足だもんね⁇　ーー……これは人助けだから特別扱いってことなのかなぁ……？）

　リアーヌは内心で首を傾げつつも、淡々と回復のギフトをかけてゆく。
　
治癒では無いために痛めた箇所を治すことは不可能だったが、それによって受けた体のダメージを少なくすることで、痛みは軽くなり、腫れもだいぶ引いたように見えた。

「ーー痛みは引いたか？」
「あ……だいぶ……」

　ずいぶんと穏やかな表情になった男子生徒は、それでもまだどこか怪我のダメージが残っているのか、ぼんやりとした様子でオリバーの問いかけに答える。

「ーーお嬢様もう平気です」
「……まだちょっと腫れてるよ？」
「この程度でしたら救護教諭のギフトでどうとでもなりますから……」
「なるほど……？」

　オリバーの言葉にどこか納得出来ないような表情を浮かべたリアーヌだったが（……そもそも私が出来るのはあくまでも回復であって治癒じゃないからなぁ……）と思い直し、素早く立ち上がってスカートの埃をパパッと払う。
　オリバーはそんなリアーヌに軽く頭を下げた後、男子生徒に向かって口を開いた。

「近くにいたやつに救護教諭を呼ぶようには言ってあるから、ここで大人しく待っとけ……今痛みが無くても、ケガ自体は治ってねぇんだ、そこから動くなよ？」
「ーーありがとうございます」
「……お前、そんな殊勝なツラも出来たんだな？」

　ケラケラと笑いながら揶揄うように言ったオリバーにリアーヌは心の中で（あ、やっぱり知り合いだったんだ）と納得していた。

「だが、礼を言うのは俺じゃ無くてうちのお嬢様にだし……ーー恩を感じるって言うなら、来年入学するうちの坊ちゃんよろしく頼むぜぇ？」

（ーーあ、そう言う知り合い……この人、ザームのお友達候補の人なんだ……）

　今度は小さく頷きながら大いに納得する。

「……うっす。　ーーあの、助かりました。　ありがとうございました」

　そう言ってリアーヌに向かって頭を下げる男子生徒。

「いえいえお気になさらず、安静になさってくださいね？」

　弟の友人になるもしれないと分かったこともあってか、リアーヌはその男子生徒をまじまじと見つめ返しながら答えた。
　ーーそして、気がついたのだった。