345 / 1,038
345
しおりを挟む
「一体なにがあったのかしらね?」
「……女の子の声だったよね⁇」
「そう聞こえだけれど……」
「ケガ……とかなのかなぁ?」
リアーヌは先ほどの悲鳴を思い返しながら、少々違和感を感じつつも予想を口にしていた。
(……ーー本当に階段から落ちたー、とかだったらどうしよう……ーーあのタイミングで落ちちゃったらなんか責任感じちゃうじゃん……ーーいや、私はなにもしてないんだけどさぁ……)
リアーヌたちがどこか不安そうな面持ちでオリバーの帰りを待っていると、馬車乗り場の方からこちらに向かって走ってくるオリバーの姿が見え始めた。
「帰りはジャンプじゃないんだ……」
そんなオリバーに気がついたリアーヌがポソリと呟いた。
その言葉にクスリと笑みを漏らしたゼクスは、揶揄うような口調で言った。
「……万が一にもリアーヌの上に落ちるわけにいかないだろ? それにオリバーさんはまだ護衛として校内をうろつけない人だからね、そんな人が一日に何回も生垣を飛び越えてたら、流石に警備部が黙って無いよ」
「ーー確かに?」
警備部とは、国から学園へ派遣されている騎士たちのことで、学園を守る実力に加え、学園に出入りできるほどには身元がしっかりしていなければならない、超の付くエリート集団でもあった。
「ーーああ、騎士科からも馬車でお帰りになるかたはいらっしゃるのだから、道が繋がっていてもおかしくはありませんのね?」
「こちらからだと馬車乗り場を通り越すことになるので、知らない方も多いんですよ」
ビアンカとゼクスの会話を聞きて、リアーヌはようやくオリバーが正規の道を使って戻ったのだということを理解した。
「ーーお嬢様、お力を貸していただけますか?」
そう言いながらリアーヌに駆け寄るオリバー。
「わ、私でよければ?」
咄嗟にそう言い返したリアーヌに頷いたオリバーは今度はゼクスに向かって「許可していただけますね?」と短くたずねる。
「ーーリアーヌが良いのであれば?」
ゼクスが肩をすくめながら了承の意を示すと、オリバーは踵を返しながらリアーヌを騎士科のほうへと誘導し始めーーふとビアンカに視線を止めると、少し言いにくそうに話を切り出した。
「ーー実は同行していた女生徒がかなり動揺していまして……」
オリバーはそこで言葉を切ると、伺うような視線でビアンカを見つめた。
「ーー分かりましたわ。 お側に付いていることしか出来ませんが……」
「ありがとうございます」
そう言いながら頭を下げたオリバーは、今度こそリアーヌたちを騎士科へと案内するように歩き始めた。
早足でその背中を追いながら、リアーヌは(……人助けは良いことだと思うけど……ーーなんか反応が普通じゃないような……? オリバーさんの知り合いが怪我したのかなぁ?)と、心の中で首を傾げるのだった。
「……女の子の声だったよね⁇」
「そう聞こえだけれど……」
「ケガ……とかなのかなぁ?」
リアーヌは先ほどの悲鳴を思い返しながら、少々違和感を感じつつも予想を口にしていた。
(……ーー本当に階段から落ちたー、とかだったらどうしよう……ーーあのタイミングで落ちちゃったらなんか責任感じちゃうじゃん……ーーいや、私はなにもしてないんだけどさぁ……)
リアーヌたちがどこか不安そうな面持ちでオリバーの帰りを待っていると、馬車乗り場の方からこちらに向かって走ってくるオリバーの姿が見え始めた。
「帰りはジャンプじゃないんだ……」
そんなオリバーに気がついたリアーヌがポソリと呟いた。
その言葉にクスリと笑みを漏らしたゼクスは、揶揄うような口調で言った。
「……万が一にもリアーヌの上に落ちるわけにいかないだろ? それにオリバーさんはまだ護衛として校内をうろつけない人だからね、そんな人が一日に何回も生垣を飛び越えてたら、流石に警備部が黙って無いよ」
「ーー確かに?」
警備部とは、国から学園へ派遣されている騎士たちのことで、学園を守る実力に加え、学園に出入りできるほどには身元がしっかりしていなければならない、超の付くエリート集団でもあった。
「ーーああ、騎士科からも馬車でお帰りになるかたはいらっしゃるのだから、道が繋がっていてもおかしくはありませんのね?」
「こちらからだと馬車乗り場を通り越すことになるので、知らない方も多いんですよ」
ビアンカとゼクスの会話を聞きて、リアーヌはようやくオリバーが正規の道を使って戻ったのだということを理解した。
「ーーお嬢様、お力を貸していただけますか?」
そう言いながらリアーヌに駆け寄るオリバー。
「わ、私でよければ?」
咄嗟にそう言い返したリアーヌに頷いたオリバーは今度はゼクスに向かって「許可していただけますね?」と短くたずねる。
「ーーリアーヌが良いのであれば?」
ゼクスが肩をすくめながら了承の意を示すと、オリバーは踵を返しながらリアーヌを騎士科のほうへと誘導し始めーーふとビアンカに視線を止めると、少し言いにくそうに話を切り出した。
「ーー実は同行していた女生徒がかなり動揺していまして……」
オリバーはそこで言葉を切ると、伺うような視線でビアンカを見つめた。
「ーー分かりましたわ。 お側に付いていることしか出来ませんが……」
「ありがとうございます」
そう言いながら頭を下げたオリバーは、今度こそリアーヌたちを騎士科へと案内するように歩き始めた。
早足でその背中を追いながら、リアーヌは(……人助けは良いことだと思うけど……ーーなんか反応が普通じゃないような……? オリバーさんの知り合いが怪我したのかなぁ?)と、心の中で首を傾げるのだった。
0
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!
寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを!
記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。
そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!?
ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する!
◆◆
第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。
◆◆
本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。
エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる