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 そんな女性陣の楽しそうな様子に、少々置いてけぼり気味の男性陣ではあったが、楽しそうに喋る女性たちを眺めながら頬を緩めているところを見ると、ゼクスが絡んでこない限りは、この会話はこのまま和やかに進んでいくようだった。

「ーーけれど“愛の妙薬”だなんてよく知ってましたわね?」
「あー……プチシュー?」

(チョコかかってる、あーん用の……)

「ええ。 確か……アウセレ国で言われているんだったわよね?」
「ーーあー……うん、そう……?」

(ーーそうか……この世界でも「西の国の文化です」で大体のことがゴリ押せてしまうんだな……?)

「……ーーやはり女性はそういうことが好きなのだな……」

 独り言のようにポソリと呟かれたフィリップのその言葉は、決して大きいものでは無かったが、リアーヌとビアンカが静かになった、その一瞬とうまく噛み合ってしまったようで、その部屋の中にいるものたちの耳にはっきりと届きーー結果、全員の視線を集めることとなった。

「ーーチョコレートって性別関係なく、みんな好き……だよね?」

 意図せず大勢の視線を集めてしまい、動揺している様子のフィリップに最初に反応を見せたのはリアーヌだった。

 リアーヌは、これが単なる交流目的のお茶会では無い。 という認識があまり無く、ビアンカとの会話が弾んでいたせいもあり、気分的にはマナーの授業の一環でやる模擬お茶会となんの違いもなかった。
 だからこそ(あ、あの人困ってるわ。 助けてあげよ)となった訳だが……ーーこの場にいた大多数の人間は(聞かせるつもりのなかった言葉のようだ。 聞かなかったことにしよう)と考えていたのだった。
 そのため、少々微妙な空気が部屋の中に鎮座することになった。
 その雰囲気にリアーヌが首を傾げるのと、そんな空気を一掃するかのようにビアンカがパンッと大きな音を立てて手を叩いたのはほとんど同時だった。

「そうね、好き嫌いには年齢だって関係ないと思うわ? それにーー……実際の効果など実感できなくとも、そう言われていることを意中の殿方とするーーその行為を楽しんでみたいと思うのが乙女心と申しますか……そう考える女性は多いのではないかと……」

 言葉の前半はリアーヌに、そして後半はフィリップに向けて発したビアンカは軽く頭を下げながら美しい微笑みを浮かべて見せた。

 その心の中では(随分と可愛らしい失態ですこと……ーーリアーヌが聞こえたことにしてしまったことですし、ちょっとぐらい突いて許されるでしょ)と、ほくそ笑みながら……
 ーー当人からの申告どおり、相変わらずビアンカとフィリップの相性はすこぶる良くないようだった。
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