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 ゲームの舞台となるレーシェンド学園。
 その運営は国が行っているということで、学園が定めた規則は、たとえ王族であろうとも従わなければならないという厳格ものだった。
 そして、その規則の中には『どのような身分の者であろうとも、新入生のうちは侍従侍女、及びメイドや護衛の同行を禁止する』というものがあった。
 これは、多少強引にでも他の家の者たちと交流しなくてはならないような状況を作り出そうという、学園側の考えもさることながら、基礎中の基礎を教える一学年の授業において、他からの助けが介入しないようにするためーーそして優秀ではあるが身分的にはそれほど高くは無い教師たちを守るという意味合いも含まれていた。

 ゲームの流れを知っているリアーヌからすれば(来年入学してくる第二王子と主人公が接近するために取り巻きが邪魔だったんだろ……)という感想を抱くようだったが。

 子爵家まで降爵したボスハウト家とはいえ、その血筋は未だに王家に連なるものとされている。
 そんなボスハウト家の長女であるリアーヌが二学年に進級した後もメイドの一人も同行しなかったというのは、あまりにも外聞が悪く、そして多数の護衛たちが出入りするようになる以上、護衛を付けないという選択肢も少々危険を伴うことであった。
 もちろんメイドや侍従だけ、どちらも伴わないーー……という生徒も一定数存在していたのが、そういった者たちは大抵が大貴族と呼ばれる者の取り巻きたちであり、護衛よりも強固な守りを持っている者たちなのであった。

「あーあ…… 護衛もメイドもうちで用意しますよーって声かけてたんだけどなぁー?」

 ニヤリと笑いながら冗談めかした態度でゼクスはリアーヌにじゃれつくように責めるような口調で言った。
 しかしその言葉にいち早く反応したのは話しかけられたリアーヌではなく、リアーヌの真向かいに座っていたフィリップだった。

「おや…… 王家の、しかも陛下の覚えめでたい優秀な人材ーーいかにラッフィナート商会といえどそうそう用意できるものかどうか……ねぇ?」

 ニッコリとそれは美しい笑顔を浮かべながら「お前の家どころか、お前の実家の力を持ってしても無理だろう? でかい口を叩くな」という本心をにじませながらゼクスに笑いかけるフィリップ。
 そんな口撃こうげきにピクリと指先を震わせたゼクスは、内心の苛立ちを隠しながら、楽しそうにクスクスと笑い声を上げつつ口を開くーー

 なぜだがリアーヌの耳にはその笑い声が、戦闘開始の合図を告げるゴングの音のように聞こえていたーー
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