成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……そこで黙られると、私が意地悪したみたいでしょう?」

 本に視線を落としたまま、なにも言わなくなってしまったリアーヌの様子に、ビアンカは気まずげにそうに言った。

(言葉だけ聞いたら、まんま意地悪だった気がしなくも無いんですけれどね……?)

 そんなことを考えながらも、パッと本から顔を上げると、ビアンカと視線を合わせヘラリ……と笑って見せる。

「私ってば意外に語学の才能があるのかもしれない」
「ーー語学の才能があることは認めますわ……それで? この本にはどんな事が書いてありますの⁇」

 リアーヌの冗談に呆れたように答えながらも本の内容が気になったビアンカは、催促をするようにトントントンと、本を指で叩きながらたずねる。
 そんなビアンカの行動に苦笑いを浮かべながらもリアーヌは本の説明を始める。

「この本の名前は豆腐百珍。 中身は本当に豆腐料理レシピだけなんだけど、アウセレ国の地域別ごとに分かれてるのね? 地域ごとの特色が出てる料理のだったりして端と端じゃ全然違う調理方法だったり、逆にすごい距離があるのに似たような料理があったり……ーービアンカそうゆうの好きそうだなって思って……」

 リアーヌの説明を聞きながら、ビアンカは興味深そうに大きく頷きながら本をパラパラとめくって行く。

「ーー地図も載ってるのね。 ……ふふ、作ってる途中の挿絵までーーとても素敵な本ね、大切に読ませていただくわ」
「うん!」

 いつものお綺麗な笑顔ではなく、はにかむようなビアンカの微笑みに、リアーヌも満面の笑顔を作って大きく頷くのだった。



「あー……その、お礼ってわけじゃ無いけど……ーー私も貴女に渡すものが……」

 楽しそうに本を眺めていたビアンカが、ふと顔を上げ、言いにくそうに一通の手紙を差し出しながら言った。

「……招待状」

 その手紙を受け取りながら嫌そうに顔をしかめ、どこか責めるような視線をビアンカに向ける。
 そんなリアーヌの視線には気がつかなかったフリをして、ビアンカは少々強引に説明を始める。

「またご近所さんたちで集まりましょうって話になって……ーー前回はとてもお話が盛り上がったから、また貴女もぜひにって……」
「……またなにか披露しろって言われる系……?」

 前回のお茶会での話を持ち出され、嫌な予感を覚えたリアーヌは探るような視線をビアンカに向けた。

「ーー……いいこと? これは友人としての忠告よ。 必ずゼクス様を連れていらっしゃい。 それが難しいなら貴女もすぐに予定を詰め込むの」
「……え、そんなんアリなの?」
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