成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 しかしボスハウト家にとって、リアーヌの優先度は低い。
 これは決して蔑ろにされているわけでは無い。
 しかしながら、人手が圧倒的に不足しているボスハウト家の現状で、一番の危険に晒されやすいのリアーヌでありーーオリバーはそれを見過ごすことが出来なかったのだろう。

「ーー主人から選ばれるべき使用人の立場で、好き勝手言ってるのは重々承知の上ですけど……それでも俺は、この王城で血筋そのものに首を垂れるより、お嬢様の笑顔を守りたい。 ……出来ることならばすぐそばで」
「……ラッフィナートに受け入れを拒否されたら戻ってこい。 下働きからこき使ってやる」

 トビアスはオリバーの意志が予想していた以上に固いことを理解すると、軽く息をつきながら、からかいを含んだ声色で話しかけた。

 近い将来ボスハウト家を出て行くリアーヌ。
 おそらくオリバー自身はついて行くことを希望するだろうが、その希望をボスハウトやラッフィナートが了承する保証はない。
 ……もっと言ってしまえば、新妻の後ろで目を光らせ続ける男の使用人など、旦那からしてみれば、邪魔者以外の何者でもない。

 だからこそトビアスは、冗談めかしてでもオリバーに「いつでも戻って来ればいい」と、声をかけたのだった。

(……そもそもボスハウトに雇ってもらう所から、なんの保証も無い話だからな……)

「ーーメイドや侍女じゃ取り除けない危険が、そこかしこに転がってますんで、割と重宝してもらえるんじゃないかと踏んでるんですけどねぇ?」

 オリバーは少し困ったように肩をすくめながら答える。

「ーー……エビか」

 オリバーの様子に一つしか心当たりが見つからなかったトビアスは、大きなため息つきながら視線で確認を取る。
 二、三回小さく頷きながら困ったように、しかし楽しそうに微笑みながらオリバーは答えた。

「空きあらば赤ん坊の如く口に入れますよ。 あのお姫様は」

 オリバーの言葉にトビアスは再び椅子の背もたれに体重を預けるように沈み込むながらしみじみと言った。

「なんともまぁ、ずいぶんと規格外なお方がお生まれになったようだ……」
「そりゃあ豪運のギフト持ちが授かったお子様ですからね? 我々凡人から見れば規格外となってしまうでしょう」
「ーーギフトの能力も規格外だからな……」

 トビアスの複雑な心境を吐き出すような呟きに、オリバーもそっと目を伏せた。
 リアーヌの持つ【コピー】の能力を王家が欲することが無いようにと、祈りを込めながら。

 そして、そんなオリバーの姿を眺めながら、トビアスは冷静に状況を分析していた。
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