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「……他家へと嫁ぐわけだから、あまり口出しも出来なくなるな……?」
ヴァルムを気づかうように、トビアスは言った。
「ーーどなたを選んでも今のように……とは行かなかったでしょう……ーーならばお嬢様のため、陛下ともやりあう覚悟を示し、嘘偽りなく幸せにすると誓ったあの若造であれば……と」
ヴァルムはそう言いながらも、忌々しそうに顔を歪めている。
あの場合において最善の選択をしたと自負しているヴァルムであったが、ラッフィナートのやり方やゼクス本人に含むところが全く無いとは言い難い様子だ。
そんな矛盾だらけのヴァルムにクスリと笑いを漏らしたトビアスは揶揄うような視線を向けて言う。
「ほう、あの若造は貴方のお眼鏡にかないましたか」
「ーーお嬢様の幸せのためならば、妥協してやっても構わない、程度ではありますがね」
フンッと大袈裟に鼻を鳴らして答えたヴァルム。
しかし、どことなく楽しそうな空気をまとっていることから、この会話自体を楽しんでいるのが見てとれた。
「相変わらず厳しいなお前は」
「おや、これでもお嬢様方には「優しく頼りになる執事」として評判なんですがねぇ?」
年の頃も近く、昔からなにかと連絡を取り合っていたこの二人からは、友人同士のような気軽さが垣間見える。
そんな二人のやり取りを聞いていたオリバーの口元にも、小さな微笑みが浮かんでいた。
「はははっそれは執事冥利につきますな?」
「ーー誠に」
ひとしきり笑い合った友人たちは、再び真剣な表情を浮かべあって視線を交わし合う。
「ーー陛下はボスハウト家と王家が今一度、強く繋がることをお望みです」
「……あのご家族の事情はどの程度の方々が……?」
「ーーデリケートな問題ですので、今は陛下のみが……しかし第二王子殿下に仕えている者の中には、リエンヌさまのお顔立ちから推測することもありえるかと……ーー手を打ちますか?」
「いえ、今はそのままに……ーー陛下はなんと?」
ヴァルムは視線を伏せながらゴクリと喉を鳴らしてたずねる。
この答えでリアーヌたち家族の未来が決まってしまうと言っても過言ではない。
これまでの話から、悪く思われてはいないようだったが、だからといって過剰な興味や愛情もあの家族には毒となりえるーーヴァルムはその可能性を危惧していたのだった。
「陛下は、幼き頃に事故で亡くなってしまった叔母上が、生きのび、お孫様まで成されていたことを大変お慶びです。 そして、陛下の従姉妹や甥姪にあたるボスハウト家の皆様に、今は亡き叔母上の分まで幸せになっていただきたいと……」
ヴァルムを気づかうように、トビアスは言った。
「ーーどなたを選んでも今のように……とは行かなかったでしょう……ーーならばお嬢様のため、陛下ともやりあう覚悟を示し、嘘偽りなく幸せにすると誓ったあの若造であれば……と」
ヴァルムはそう言いながらも、忌々しそうに顔を歪めている。
あの場合において最善の選択をしたと自負しているヴァルムであったが、ラッフィナートのやり方やゼクス本人に含むところが全く無いとは言い難い様子だ。
そんな矛盾だらけのヴァルムにクスリと笑いを漏らしたトビアスは揶揄うような視線を向けて言う。
「ほう、あの若造は貴方のお眼鏡にかないましたか」
「ーーお嬢様の幸せのためならば、妥協してやっても構わない、程度ではありますがね」
フンッと大袈裟に鼻を鳴らして答えたヴァルム。
しかし、どことなく楽しそうな空気をまとっていることから、この会話自体を楽しんでいるのが見てとれた。
「相変わらず厳しいなお前は」
「おや、これでもお嬢様方には「優しく頼りになる執事」として評判なんですがねぇ?」
年の頃も近く、昔からなにかと連絡を取り合っていたこの二人からは、友人同士のような気軽さが垣間見える。
そんな二人のやり取りを聞いていたオリバーの口元にも、小さな微笑みが浮かんでいた。
「はははっそれは執事冥利につきますな?」
「ーー誠に」
ひとしきり笑い合った友人たちは、再び真剣な表情を浮かべあって視線を交わし合う。
「ーー陛下はボスハウト家と王家が今一度、強く繋がることをお望みです」
「……あのご家族の事情はどの程度の方々が……?」
「ーーデリケートな問題ですので、今は陛下のみが……しかし第二王子殿下に仕えている者の中には、リエンヌさまのお顔立ちから推測することもありえるかと……ーー手を打ちますか?」
「いえ、今はそのままに……ーー陛下はなんと?」
ヴァルムは視線を伏せながらゴクリと喉を鳴らしてたずねる。
この答えでリアーヌたち家族の未来が決まってしまうと言っても過言ではない。
これまでの話から、悪く思われてはいないようだったが、だからといって過剰な興味や愛情もあの家族には毒となりえるーーヴァルムはその可能性を危惧していたのだった。
「陛下は、幼き頃に事故で亡くなってしまった叔母上が、生きのび、お孫様まで成されていたことを大変お慶びです。 そして、陛下の従姉妹や甥姪にあたるボスハウト家の皆様に、今は亡き叔母上の分まで幸せになっていただきたいと……」
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