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(そして保湿クリームに良いと教えてもらったのは、生クリーム代わりに使ったルチェの実だったーーって言っても、もう生クリーム味はならないほど成熟してカッラカラに乾いたものらしいんだけどね。 形はちょっと違うけどイメージとしてはココナッツみたいなものなのかな? 若い時は生クリームもどきの元になって、成熟したら保湿クリームになるーーみたいな。 しかも植物由来だから口に入っても安心だし、なんかほんのり甘い匂いまでするんだよね! 当然、ボスハウト家御用達の美容品に加わって……ゼクス様とアンナさんがしばらくお話し合いをした後、固い握手を交わしあっていたから、多分ボスハウト家の独占品扱いにも成功してるんじゃないかな……? どんどんうちの美容関係が充実していく……ーービアンカんトコ遊びに行く時持ってったら喜ぶかな? ……ーーどう考えても本のほうが喜んでくれそうだけど、美容品が嫌いってわけじゃないだろうし……ーーどっちも持ってくか。 保険はかけておくものだと言われてるしな……)
リアーヌがそんなことを考えていると、ようやく全ての荷物を運び入れ、出発の準備が整ったことを知らされた。
「それでは、どうか道中お気をつけて行ってらっしゃいませ。 ーーお早いお戻りをお待ちしております」
村を代表しーー改めて村長の役職に就任したディーターがゼクスに向かって深々と一礼しながら言った。
これは領民が領主にかける伝統的なーーお決まりのような挨拶だった。
「ーー行ってくるよ」
大きく頷きながら満足そうに返すゼクスに、リアーヌの口元がニヨニヨと歪む。
(……ダメだ。 メイド喫茶のやりとりにしか聞こえない……)
リアーヌは口の内側を噛み締め、弧を描きそうになる口元を必死に押さえつけていた。
そんなリアーヌと顔を上げたディーターの視線が絡み合いーーリアーヌがニコリと笑いかける前に、ディーターは再び頭を下げ口を開いた。
「ーーお早いお戻りを心から願っております」
(ディーターさん……ーー間違ってますよ……! それって領主だけなんです‼︎ ーーしかし今の私はちゃんとフォローの入れられる女! お茶会のレッスンたくさんしたからねっ‼︎ 言い間違いのフォローなんかお茶の子さいさいなんだからっ)
「行ってまいりますね」
(リアーヌ知ってる! 口角あげときゃなんとかなる‼︎ ーーディーターさん、大丈夫だよ! 貴族だって結構言い間違える人いるから! ゼクスも私も気になんかしないよっ‼︎)
口角をあげ続けながらディーターに視線を送っているリアーヌの耳に、クスリとした小さな笑い声が届いた。
リアーヌがそんなことを考えていると、ようやく全ての荷物を運び入れ、出発の準備が整ったことを知らされた。
「それでは、どうか道中お気をつけて行ってらっしゃいませ。 ーーお早いお戻りをお待ちしております」
村を代表しーー改めて村長の役職に就任したディーターがゼクスに向かって深々と一礼しながら言った。
これは領民が領主にかける伝統的なーーお決まりのような挨拶だった。
「ーー行ってくるよ」
大きく頷きながら満足そうに返すゼクスに、リアーヌの口元がニヨニヨと歪む。
(……ダメだ。 メイド喫茶のやりとりにしか聞こえない……)
リアーヌは口の内側を噛み締め、弧を描きそうになる口元を必死に押さえつけていた。
そんなリアーヌと顔を上げたディーターの視線が絡み合いーーリアーヌがニコリと笑いかける前に、ディーターは再び頭を下げ口を開いた。
「ーーお早いお戻りを心から願っております」
(ディーターさん……ーー間違ってますよ……! それって領主だけなんです‼︎ ーーしかし今の私はちゃんとフォローの入れられる女! お茶会のレッスンたくさんしたからねっ‼︎ 言い間違いのフォローなんかお茶の子さいさいなんだからっ)
「行ってまいりますね」
(リアーヌ知ってる! 口角あげときゃなんとかなる‼︎ ーーディーターさん、大丈夫だよ! 貴族だって結構言い間違える人いるから! ゼクスも私も気になんかしないよっ‼︎)
口角をあげ続けながらディーターに視線を送っているリアーヌの耳に、クスリとした小さな笑い声が届いた。
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