成り上がり令嬢暴走日記！

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　青年はそう声を上げながら以外そうな顔つきでゼクスを盗み見た。
　ことの成り行きをずっと見守っていたゼクスは、そんな青年の視線にすら気が付いていたが、微妙にニュアンスの違うリアーヌの説明に、視線も合わさず、肯定とも否定とも取れないような仕草で肩をすくめただけだった。

「で、あんたーーお兄さんたちも、そのお土産を作って良いの」

　リアーヌは思わず“アンタ”と呼びかけてしまったことをごまかすように、ヘラリ……笑みを浮かべながら説明を続ける。

「おう」
「もうね、これ何でもアリだから。　料理が得意な人はジャムでも砂糖漬けでもお菓子でもパンでも作って良いし、お裁縫が得意ならポプリを入れる袋を作っても良い」

　そうリアーヌが説明を始めると、周囲の村人たちからの非難めいた視線や「ちょっとー？」と言う、仕立て屋からの声が上がるが、リアーヌはそんなことはお構いなしに青年に向かって説明を続ける。

「ーーただし、なにを作っても全部買い取ってもらえるわけじゃ無いの」
「……なんか良いって言われねーとダメなんだろ？」
「……まぁ、そんな感じ」

（ーー“なんか”から喋り始めてるのに、理解してるふりすんのやめろって……）

　リアーヌは残念な生き物を見るような目を青年に向けると、キュッと唇を引き結びながら小刻みに頷いて、メモ用紙に手をかざした

（多分、この人はこの人なりに理解してる……んだと思う。　ーーなにせ本人的には理解してる気しかないんだから、これ以上はこっちがなに言ってもムダだろう……ーーまぁ、説明が壊滅的に下手ってことは判明したわけだから、あとは私がちゃんとした説明をメモ用紙に写し取るだけよ……）

「料理も裁縫も無理ならグランツァの花乾かすんだろ？」
「ーーポプリを作るんだよ。　乾かしても匂いが全然しないなら買い取ってもらえないの」
「……詐欺じゃねぇか」
「ーー詐欺ではねぇんだわ」

　青年の言葉を速攻で否定したリアーヌに、青年は非難めいた視線を送った。

「けど……」
「さっきも言ったでしょ？　合格がもらえなきゃダメ。　ゼクス様は乾燥した花が欲しいんじゃなくて、おみやげ物として買ってもらえる商品が欲しいんだから、なんの匂いもしない乾燥した花とかは買い取ってくれないの」
「……ーーじゃあ、どうするんだよ？」

（そこを自分たちで考えましょうって話の説明なんだよなぁ……？）

　しかしリアーヌは同時に、急に言われてもそうなるか……とも考えていた。

　この村の人々は、長い間搾取されるだけの日々を過ごしてきていた人たちだ。
　お店を運営している人たちならば、どうにかして売り上げを伸ばそう、利益を上げようと、頭を悩ませていたかもしれないが……