成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……うちも手を引きたくなってきたかな……?」

 パン屋の男性はリアーヌの言葉に青ざめた顔をさらにひきつらせながら答える。

「あ、その辺りは平気だと思う。 そうなっちゃったら父さんも無事じゃないから。 うちにはねーそうならないように手助けしてくれる凄い執事がいるんだー。 花園でもの売るんだし、実質うちのお抱えみたいなもんだから、きっと助けてもらえるよ! ……ーーあ、ラッフィナート男爵家のお抱えでしたね……?」
 
 流石に勘違いだと言い張るには言葉が過ぎた……と思ったリアーヌは、口元を押さえ、へちょり……と眉を下げながら申し訳なさそうにゼクスを振り返った。
 しかし、その視線の先にいたゼクスも少々顔色を悪くしながら顔をひきつらせていた。
 リアーヌの話を聞いて顔色変えるハメになったのはパン屋の男性だけではなかったらしい。

 しかし、ゼクスはリアーヌの視線に気がつくと無理やり愛想笑いをその顔に貼り付けながら答える。

「……真実を追求するというならヴァルム殿に勝る味方はいないだろ? 万が一にもそうなったら真っ先に頼らせてもらうよ……ーー絶対に」
「ふふっ うちのヴァルムさんは最強ですからね! ーーだから心配しないで? ヴァルムさんの目を見て「おかしなものなんか売ってない!」って言えるなら絶対守って見せるから」

 リアーヌの言葉にパン屋はしばらくなにかを考え、そして少し迷いながらも、しっかりと頷いてから答えた。

「ーー……そうなると、やっぱり食べ物系は食べ物屋が扱うべき……なんだろうね」
「絶対じゃないけどね。 でも私はそうして欲しいかな?」
「ーー俺からも頼めるかなー……?」

 少し離れたところからかけられた、ゼクスの言葉にパン屋は「は、はい!」と、条件反射のようにうわずった声で返事を返し、ペコリと頭を下げた。

 リアーヌがそんなパン屋の様子を、苦笑いを浮かべながら眺めていると、すぐそばに座っていた女性が、小さく声をひそめながらたずねてきた。

「ーーポプリは食中毒になんてならないわよね?」

 そちらに視線を移すと、二十代後半のように見える女性が、口元に手を添えながら身を小さくしてリアーヌに話しかけていた。

「ーー料理はしない感じですか? 簡単なものでも毎日やってるなら、基本は出来てると思いますけど……?」

 リアーヌはそう答えながらも、心の中で(いや、出来ていないの人もいるのか……?)と自問自答し首を傾げる。

「やらないわけじゃないけど、職業柄料理より裁縫のほうが得意なの」

 ケラケラ笑いながら手をパタパタさせつつ答えた女性の言葉に、リアーヌは逆方向にまた首を傾げながらたずねた。
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