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「母さんにお願いされてたじゃないですか、花とか紅葉が綺麗な木や植物を格安で探してきてーって……」
「ああ。 すでにグランツァーーこの村に来る時に言っていた赤い花の木は確保してるけど……え、他の植物もこの人に任せるつもり、なのかな……?」

 ゼクスは言外に「その話って俺に来てた話じゃなかったっけ……?」と、不満を滲ませながらたずねた。
 確かに薪屋にとってもいい話であることに間違いは無いのだろうが、自分が得られていたであろう利益がよそに流れていくのを見過ごすほど人間は出来ていない自覚があった。

「……だめ、ですかね?」
「だめっていうか……」

 首を傾げてたずねられ、ゼクスは口の中でモゴモゴと言葉を転がしている。

「ーー恐れながら……」

 そんな二人に静かに声をかけたのはアンナだった。

「……どうかしましたか?」
「ご依頼相手はあくまでもラッフィナート男爵様が宜しいのではないかと愚考いたします」
「ーーそう、なんですかね?」

 深々と頭を下げながら言ったアンナの頭を見つめ、リアーヌ話再び首を傾げながらゼクスに向かってたずねた。

「ーーまぁ、俺は領主だから定期的にこの村とのやりとりをするわけだし、ボスハウトがこの村と個別にやり取りをするよりも、いろいろ費用は抑えられると思うよ? これだけの距離になると手紙のやり取りだけでも馬鹿にならない出費になるからねぇ……」
「ーーつまりその分お安く……?」

(送料無料はどの世界に行っても魅力的な言葉なんだな……)

「ーー頑張るよ」

 リアーヌから信頼たっぷりのキラキラと輝く眼差しを向けられて、ゼクスは困ったように肩をすくめながら答えた。

(……あれ? この話儲け出るよな……⁇ ーー今のボスハウト家、尋常じゃないほど金が集まって来てるって話は本当だろうし、言うてそこまで値切られたりしないよな……?)

 ゼクスの返答に満足そうに頷いたリアーヌは薪屋の男性に向かい「そういうことになりましたので、ゼクス様からお仕事もらってください」と声をかける。
 しかし薪屋の男性は慌てて、訴えるような視線をリアーヌに向けながら口を開いた。

「待ってくれ! それじゃ結局そいつに中抜きされてこっちの取り分が減るじゃねぇかよ⁉︎」

 この男性もまた、自分が得られていたであろう利益がよそに流れていくのを見過ごせない側の人種であるようだった。

「……取りーーますかね?」
「ーーまぁ……取る、かな?」

 リアーヌに確認されたゼクスは言いにくそうに苦笑いで答える。
 しかし悪びれている様子では無く、商人として当たり前のことをしているのだ、という想いまで透けて見えるようだった。


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