成り上がり令嬢暴走日記！

274

「ーー例えば？　えっと……この日までにここまで進んだらお酒が飲めます！　とか、予定よりも早く終わったら金一封！　とか……？」

（父さんの時は予定よりもだいぶ進んだからって金一封貰えて、いつもよりもちょっといいお酒と私たちへのお土産がタダになったって、だいぶご機嫌だったんだよねー）

「なるほど……？　ーー金一封は無理だけど、お酒とかはありだね⁇」

　人を動かすことに慣れているゼクスは、リアーヌが言った方法が、人のやる気を出させるために有効な手段であると、すぐさま理解した。

（その程度の成功報酬なら安いもんだしーー……村人たちへのアピールにもなる。　前領主とは違って今の領主はーーとなってくれれば随分とやりやすくなる）

「じゃあ、お金の代わりにケーキとか！」
「ははっケーキもらえて嬉しいのはリアーヌだけじゃ無いかなぁ？　ーー肉で手を打ってくれない⁇」
「……疲れたら甘いものが欲しくなるんですよ？」
「なら……フルーツかな？」

（ーー規格外や傷物の使い道も決まったな……？）

「フルーツ！　良いですね‼︎」

　リアーヌはすっかり消え去った不快感を喜ぶように、手を叩いて嬉しげな声を上げた。

「ーーじゃあ、労働納税に関してはそんな感じで……答えは出発前までに聞かせてください」

　ゼクスの言葉にディーターと青年はそれぞれ、力強く頷き返した。

「それで……物納ですかねぇー……」

　言いながらゼクスは気合を入れるように深い深呼吸を一つしてから椅子に座り直す。

「ーーフルーツや薪は良いとして……うちはなにを収めりゃいいんだ？」

　村人の一人が、周りの村人に向かってたずねている。
　村人たちが首を傾げ合っているのを見ながらゼクスは軽い咳払いをする。
　村人たちの注目が自分に集まったのを確認してから口を開いた。

「店によって、物納の品物は変わる。　こちらとしては個別に相談にしたいのだがーーあぁ、ディーターの同席は認めるし、それなら金で納税するというのも認めるよ？」

　ゼクスは自分の提案に、村人たちが一斉に顔を曇らせディーターを見つめたことに気がつき、安心させるように言葉を付け加えた。

「……ーー野菜やパンでも可能なのでしょうか？」
「野菜はともかくパンはなぁ……？」

　ディーターからの質問に、顔をしかめながら答えるゼクス。
　物納されたパンを金に換える方法が、どうやっても想像できなかった。

「ーーダメですか？」

　リアーヌはキョトンとしながらゼクスに問いかける。
　なぜゼクスが難色を示し……いるのか、本気で分からない様子だ。