269 / 1,038
269
しおりを挟む
「えーと……そう! その話を続けましょう! ーーなんで労働での納税はイヤなんですか? ……私はなにを理解していないんでしょう⁇」
(労働での納税は父さんだってやってた。 私たちが小さかったから最低限ではあったけど、そこまで嫌がってるようには見えなかったけど……? なんなら近所のおっちゃんたちとお金出し合って毎晩晩酌して楽しんでたっぽいし、行商人から買った、ちょっとしたものをお土産にくれたこともある……ーー私、そんなに金持ちのお嬢様やってたわけじゃないから、そこまでトンチンカンなこと言ったつもり無いんだけどなぁ……)
リアーヌの言葉に、青年は気まずそうに頭をかいて言葉を濁そうとするが、周りやリアーヌの真っ直ぐな視線に促され、ポソリポソリと事情の説明を始めた。
「ーー貴族に言われて働きに出るってことは、余計に金がかかるってことなんだ……です」
説明を始めた青年の視線がリアーヌの少し後ろに送られた瞬間、すぐさま青年は姿勢を正して言葉づかいを改めた。
(……なんならこの人に大声出された時よりも、後ろのアンナさんの様子を確認するほうが恐ろしいまであるな……?)
リアーヌは乾いた笑いを浮かべながら、青年の説明の続きに耳を傾ける。
「食事にテント代や道具を借りるならその金……それから馬車を使うならその運賃も……」
「……え?」
リアーヌは驚愕に目を見開いて青年や村人たちを確認するが、そのほとんどが顔を顰めグッと押し黙っている様子を見て、その青年の言葉が真実なのであるということを理解する。
「ーー最低?」
そしてゼクスに視線を移すとポソリと呟いた。
父からの話でしか労働での納税を知らないリアーヌですら、今の青年の言っていたことが異常であるということぐらいは分かる。
通常労働での納税者たちは、その衣食住すべての面倒を領主に見てもらうのが当たり前なのだ。
そのほとんどの者たちが自分達で金を出し、酒やら嗜好品やらを買ってはいても、基本的な食事やテントなどは支給されるものだった。
ましてや使う道具に金を出させたり、そこに行くまでの運賃を請求することなど、噂ですら聞いたこともない、あり得ないことだったのだ。
「待って⁉︎ え、取らないよそんなの⁉︎ ーーそんな顔で見ないでよ、取るつもりなんか無かったってば!」
リアーヌや村人たちに不信感たっぷりの眼差しを向けられて、ゼクスは弁解するように慌てて言葉を重ねていく。
「納税だっていうなら食事はこっちで用意するし、野宿になるようならテントだって道具だってこっちで用意するよ! 馬車だってそうだからね⁉︎ こっちで用意して送り出すに決まってる‼︎」
(労働での納税は父さんだってやってた。 私たちが小さかったから最低限ではあったけど、そこまで嫌がってるようには見えなかったけど……? なんなら近所のおっちゃんたちとお金出し合って毎晩晩酌して楽しんでたっぽいし、行商人から買った、ちょっとしたものをお土産にくれたこともある……ーー私、そんなに金持ちのお嬢様やってたわけじゃないから、そこまでトンチンカンなこと言ったつもり無いんだけどなぁ……)
リアーヌの言葉に、青年は気まずそうに頭をかいて言葉を濁そうとするが、周りやリアーヌの真っ直ぐな視線に促され、ポソリポソリと事情の説明を始めた。
「ーー貴族に言われて働きに出るってことは、余計に金がかかるってことなんだ……です」
説明を始めた青年の視線がリアーヌの少し後ろに送られた瞬間、すぐさま青年は姿勢を正して言葉づかいを改めた。
(……なんならこの人に大声出された時よりも、後ろのアンナさんの様子を確認するほうが恐ろしいまであるな……?)
リアーヌは乾いた笑いを浮かべながら、青年の説明の続きに耳を傾ける。
「食事にテント代や道具を借りるならその金……それから馬車を使うならその運賃も……」
「……え?」
リアーヌは驚愕に目を見開いて青年や村人たちを確認するが、そのほとんどが顔を顰めグッと押し黙っている様子を見て、その青年の言葉が真実なのであるということを理解する。
「ーー最低?」
そしてゼクスに視線を移すとポソリと呟いた。
父からの話でしか労働での納税を知らないリアーヌですら、今の青年の言っていたことが異常であるということぐらいは分かる。
通常労働での納税者たちは、その衣食住すべての面倒を領主に見てもらうのが当たり前なのだ。
そのほとんどの者たちが自分達で金を出し、酒やら嗜好品やらを買ってはいても、基本的な食事やテントなどは支給されるものだった。
ましてや使う道具に金を出させたり、そこに行くまでの運賃を請求することなど、噂ですら聞いたこともない、あり得ないことだったのだ。
「待って⁉︎ え、取らないよそんなの⁉︎ ーーそんな顔で見ないでよ、取るつもりなんか無かったってば!」
リアーヌや村人たちに不信感たっぷりの眼差しを向けられて、ゼクスは弁解するように慌てて言葉を重ねていく。
「納税だっていうなら食事はこっちで用意するし、野宿になるようならテントだって道具だってこっちで用意するよ! 馬車だってそうだからね⁉︎ こっちで用意して送り出すに決まってる‼︎」
0
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!
寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを!
記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。
そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!?
ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する!
◆◆
第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。
◆◆
本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。
エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる