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「ーーへぇー……?」

(ーー待って? 確か真珠ーーパールって食べたり塗ったりする美容品って話あったよね⁇ クレオパトラの美の秘訣! とかいうの見たことあるよ⁉︎ どうやって使うんだろう……? 食後にちょっとずつーーとかでいいのかな⁇)

「ーーお礼はあれにしよっか?」

 薬瓶から目を離さぬまま何事かを考え始めたリアーヌに、ゼクスは肩をすくめ、笑いながら声をかけた。

「あ、はい。 そうします!」

 満面の笑みで答えるリアーヌ。

「おいおい、いいのかよ? ……自分で言うのもなんだが、ありゃ真珠ってだけで全く売り物にならねぇやつを粉にしただけだぞ……?」

 そんな二人のやり取りに慌てたテオは、少し気まずそうに薬瓶の中身についての説明を始めた。
 自分が守銭奴であり、ケチであると言う自覚があるテオではあったが、この窮地に一筋の光明をもたらしてくれた少女に対し、売り物にすらならない真珠で作った粉をお礼として渡すのは、流石に気が被れる行為であったのだ。

(確かにご婦人方にゃ好評だが、それでも元がクズ真珠ってのはよぉ……)

「本人がこれだけ興味津々だからねー。 ーーそれに婚約者のアクセサリーくらい俺が揃えて見せますってぇ」

 そう言ったゼクスは足を組みながらニヤリとテオに笑いかける。

「ーーとびっきりの用意しといてやるよ」
「そうこなくっちゃねー。 リアーヌ良かったね?」
「え……あ、えっと……?」

(え、なにが良かったんだろう? ーー私が真珠の粉を欲しがって、それが安いからって新しい礼品につながった……ーーえっもしかして、それなりの真珠がタダになったってこと⁉︎)

「ーータダで貰えてラッキーですね⁉︎」
「うん、真珠のアクセサリーは買うんだけどね?」
「……あ、値引き! 良いものをより安くって言うのは買い物の醍醐味ですよねー」
「……うん。 ーーじゃタコ焼き食べに行こっかぁ……?」

 ゼクスは少々疲れた様子でため息混じりに言った。

「タコ焼き‼︎」
「ーーはい、いいお返事ですねー……」

 ゼクスはそう答えながら、呆れたように笑いテオに向かって肩をすくめるのだったーー

(なーんで今の会話で真珠がタダになると思ったんだか……ーービセンテ地方の真珠はこの国一番だぞ……? しかもそこの顔役であるおやっさんが“とびっきり”の真珠を用意してくれるって約束してくれたって言うのに……ーー俺からの真珠なんか期待してないってことかよ……?)

 リアーヌは全く覚えていなかったが、とある“決まり事”がこの国にはあった。
 それは新郎が新婦に渡す最初のプレゼントは真珠であるということだ。

 その丸い形から家庭円満の象徴という説や子宝に恵まれると言った意味合いもあると言われていて、どれだけ丸く白く大きな真珠を用意できるかで、その夫婦の未来が占えるとまで言われている、新婚夫婦にとっては特大の一大イベントであるはずなのだが……
 リアーヌにそのイベントを知る機会は訪れなかったようだったーー
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