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 リアーヌの答えに満足そうに頷いたゼクスは、再びニヤリと明らかになにか企んでいそうな笑顔を浮かべた。

「ーーはいここに、喪服の時は質素にしなきゃいけないから……って黒真珠の購入を迷っているお客さんがいます。 さっ見事売ってみようか、店員さん?」

 そう言いながら揶揄うようにリアーヌを見つめるゼクス。

「ーーまた私が店員さんですかぁ……?」

 イヤそうに顔を顰め、唇を尖らせるリアーヌにゼクスは慌てて、機嫌を取るように言葉を重ねた。

「見事売れたら特別ボーナスで真珠のアクセサリー一式、なんてどう? ビセンテの真珠って、品質が高いって結構評判なんだよ⁇」
「……でももう買っちゃいましたし」

(一式ではないけど、真珠は真珠だ。 ……それに私、あんまりパールに心惹かれるものが無いというか……)

 心底乗り気では無いリアーヌに、ゼクスはあまり切りたくはなかった手札を切ることを決めた。

「ーー……さっき行きたがってた、屋台街での飲食も許可します」
「たこ焼き⁉︎」

 ゼクスの切った手札に見事に食いつくリアーヌ。
 しかしゼクスは、背後に控えるアンナたちの気配が、ざわり……険呑に変わるのをはっきりと感じていた。

(やっぱり怒るよねぇ……? ーーだけど、こっちもそう簡単には引けなくってねー……ーーちゃんと見張ってたべ過ぎないようにしますので、今回ばかりは大目に見てください! ……元はと言えばあんな庶民丸出しの屋台料理に興味津々なリアーヌにも責任はあると思ってますよ、俺はっ!)

 大きく息を吸い込み、ヤケクソのように満面の笑みをリアーヌに返したゼクスは、少し肩をすくめながら冗談めかして言う。

「食べ物の名前は返事に含まれないと思うけどー?」
「ーー……やりますって答えましたけど?」

 リアーヌは若干の震えが含まれる声で答えた。

「あ、俺の聞き間違いだったんだー?」
「そうですけど⁇」

 視線を揺らしつつもシラッとした表情を浮かべながら、かなりムリのあるウソをつき通す。

(大体、今のは返事のつもりなんかじゃなかったし。 食べていいよって言われたから、えっじゃあ何食べよう⁉︎ ってなって、一番最初に思いついたのがたこ焼きだっただけだし! 食べたいものの名前が口からとぅるんしちゃっただけで、絶対に返事のつもりなんかじゃなかったしっ!)

「ーーそっかぁ? 引き受けてもらえたなら嬉しいなぁー⁇」

 ゼクスがわざとらしい口調でそう言うと、向かいに座っていたテオがケラケラと笑い声をあげ始めた。

「ははっ お二人さん、いいコンビじゃねぇか」
「ーーそう?」
「ああ、お似合いだぜ? ほれ嬢ちゃん、たこ焼きのために真珠売ってくれや」
「ぬぅ……」

 揶揄うようにそう言ったテオに、リアーヌは思い切り顔を顰めて見せ、そんなリアーヌの姿に、テオはさらに楽しそうな笑い声を上げるのだった。
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