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「……じゃ、リアーヌ説明の続きしてもらえるかな?」

 ゼクスはリアーヌに申し訳なさそうに言いながらも、その視線や指先で黒真珠たちを指し示す。

(……え、ついさっきあれの説明を止めたのは貴方様なんですけれどもねぇ……?)

 ゼクスのこれまでの態度や言葉に困惑しきっていたリアーヌは、訝しげに眉をひそめてゼクスを見つめ返す。
 そんなリアーヌにゼクスは、再び申し訳なさそうに眉を下げ、笑顔や仕草で許しを乞うような態度を取り、あくまでも下手に出つつ、しかしやんわりと続きを促した。
 しばらく視線だけで攻防を続けていたリアーヌだったが、長い沈黙の時間に耐えきれず、大きなため息の後に説明の言葉を紡ぎ始めたのだった。

「ーーえっとですね?」

(そもそも続きとか言われたって、ほとんど最初で止められてるから、説明だって最初からなんだよなぁ……)

「ーーあの緑がかった真珠はピーコックグリーンって呼ばれる真珠で、あんまり数が取れないものなんですよ。 だからその希少価値が高くて……ーーだったら値段もするんだと思ってたんですけど……違うんですかね……?」

 説明しながら自分の知識に自信がなくなってきたリアーヌは、その言葉をどんどんと萎ませていった。

「希少価値……」

 ゼクスは真剣な顔つきで色の濃い真珠たちを睨みつけるように呟いた。

「ーーものは言いようだわな……」

 テオは呆然とそう呟いたが、目や口元がゆるゆると緩んでいて、上機嫌なのだということははたから見ても明白だった。

(……全然の見当違いで「いや、あの地方の真珠は殆どがこの色だぜ?」とか言われたらどうしよう……)

 当然のことながらそんな事実は無い。
 どの地方ーーこの世界において、孔雀の風合いを持った真珠は非常に数が少なかった。

 しかし、希少価値が高いからということと、人が欲しがるということは、決してイコールで結ばれることでは無い。
 この世界での真珠の美しさとは、真円で白い輝きを持つものーーつまりは一番オーソドックスな真珠なのだ。
 色付きの真珠も好まれることは多かったが、その風合いはゴールド系のような白から大きく外れないものの人気が高く、リアーヌが気に入ったティアドロップ型の水色のような色合いの真珠は、大粒で照り艶が良ければ売り物になるが、好む客ーーことさら外聞を気にする貴族階級の者は、かなりの少数であった。
 ーーつまり、色が濃く白から最も離れた所にある黒真珠やピーコックグリーンには商品価値など無いも同然だったのだ。

ーー今までは。
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