成り上がり令嬢暴走日記！

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　しかし二人が言葉を発しなかったことで、当の本人であるリアーヌだけは、内心でとても焦っていた。

（……えっ？　これで終わりじゃダメなの⁉︎　大体一言で「よし買った！」って言わせるような言葉なんてこの世にあるの⁉︎　えっと、あと進めるとしたら……あ、バロック真珠って確かーー）

「ーー傷ついてもなお、その身を輝かせたバロック真珠は、その力強さから持ち主に幸せを読んでくれるって言われてるんですよ。　これを買って帰ったらきっとお客様と奥様に幸せが訪れますね。　……とかならどうでしょう？」
「ーーよし買った！」

　リアーヌの言葉を呆然と聞いていたテオは、パシンッと自分の膝を叩きながら満面の笑顔でリアーヌに答えた。

　幼い頃より真珠に、そして売り物にはならないバロック真珠に慣れ親しんできた自分であっても、リアーヌの話を聞いたあとではものの見え方が変わったのだ。
　真珠に詳しくない者たちならば、より一層心を動かされると確信していた。

「やった！　ゼクス様売れましたよ！」
「ーー良かったね？」

（……まぁ、俺らが買う側なわけだけど……ーーま、すぐに売る側に回るしーーなによりも今の言葉は効く）

　ゼクスはリアーヌに向けた笑顔の奥で、買い取ったあとのバロック真珠の売り方を頭の中で組み立て始めていた。
　そして大いに喜んでいるテオに向かい口を開いた

「ってわけで、お互い光明が見えたわけだし……そのお礼にティアドロップ型とこの大きさ以上のものは全部買い取らせてもらうねー？　もちろんこの値段で」

　ゼクスがテーブルの真珠ーーを納めているトレイのような入れ物をトントンと叩きながらの言葉にテオはギョッと目を剥いて、リアーヌは興味深そうにテーブルの上の真珠ーーそれを治めている入れ物に視線を落とした。
　そこには小さな値札が取り付けられていて“Ｃ５”だの“Ｓ１”という、これまた小さな文字が書かれていた。

（あ、あれ値札なのか……ーーえっ⁉︎　Ｃ５って、五銅貨って意味だよね⁉︎）

「やっす……」
「そ、そうだ！　嬢ちゃんの言う通りだ安すぎる！」

　思わず口から出たリアーヌの呟きを拾ったテオは、ゼクスに指を突きつけながらその言葉に乗る。

「いやいや値段つけてるのそっちだからね？　それにーー情報だって対価になると思いますけどぉ？」

　呆れたように言ったゼクスは、チラリとリアーヌに視線を流す。
　そして少々好戦的な笑顔をテオに向けた。
　言外に、あの言葉が、この子のアイデア何なければこれらの真珠は今でもガラクタ同然だったんだぞーー？　という言葉をにじませて。