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「その辺の話、当然なんだけど私は全くノータッチだからねぇ? でも古くからあったお店の店長さんが怒鳴り込んでくるぐらいには、ずいぶんな見直ししたっぽいよ」
「……古くからの店長って、あのお店の重鎮なんじゃなくて……?」
「多分? でも店長ってあくまでも店長で社員じゃん? なにかあった時責任取るわけでもないのにデカい顔してるとかあり得なくない⁇」
「……言いたいことは分かるけれどーー重鎮って呼ばれる方々は総じてそのような地位にいることが多いのでは……?」
「ええー、そうなの? 重鎮って厄介だねぇ⁇」
「ーーまぁ、厄介なのですけれどね……?」

 そう同意しながら小さく肩をすくめたビアンカは、シャンパンを口に運びながら(けれど人脈を持ってしまっているから切り捨てられない人たちなんだけれどーー……そこを切り捨てるための新しい契約先、ってことなのかしらね……)と、推察していた。

「だから母さんたち、あんなに楽しそうに色々口出ししてたんだ……」
「楽しそうに?」
「うん。 ……うちの両親ーーってかボスハウト家の使用人の全員が、なんだけどね?」
「ああ、子爵様方も元々はそうだったからーーという話ね?」
「そう! その時からボスハウト家のお金を食い散らかしてた親戚ーー今はもう“元”なんだけどーーそういう人たちが大っ嫌いなわけ」
「……好きな人は少数だと思うわ?」
「あはは、言われてみればそうかも!」

 リアーヌはビアンカの言葉にコロコロ笑って同意した後「だからね?」と続けて話を元に戻した。

「不正とか、ごまかしとかする人、絶対許さないマンな訳」
「……何があっても許さないってことね?」
「そ。 まぁこれもみんなそうかもしれないけどー。 だから徹底的にやったみたいだよ」

 そう言ってヘラリと笑うリアーヌに、ビアンカは(そんなわけないでしょ……ーー大抵の貴族ーーいえ、大抵の人間が多少のごまかしを黙認しながら仕事してるわよ……)と心の中でグチるように思った。
 しかしこの友人にその辺りのは似合わないと思い直し、また少し肩をすくめながら口を開いた。

「……そうね。 私も嫌いーーどちらかというと」
「だよねー」

 そう言いながらソファーに沈み込むように背もたれに身体を預けるリアーヌ。

「ーーそれで?」

 そんなリアーヌをチラリと横目で確認しながらビアンカは話の続きをーー自分が聞きたい情報の提供を促した。

「えっ?」
「……だからラッフィナート家の噂のことよ。 ゼクス様ではなくて本家の方ね? 今回のことは叙爵を見据えてのことではないの?」
「えー? どうなんだろう⁇ ゼクス様はお金ばっかりかかるから、貴族なんてなるもんじゃないよって嘆いてたけど……ーーあ、でもそういう圧がかかってるんだって話は聞いた!」
「……ーーそう」

 ビアンカはそう話すリアーヌの顔をじっと見つめ、リアーヌがウソをついていないことを確信した。
 つまりそれは、ラッフィナート家の叙爵がすぐに行われることはないということか、もしくはリアーヌにはなんの情報も与えられていないかのどちらかでしかなくーーならば、これ以上リアーヌから得られる情報は無いと判断したようだった。
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