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「なのに最近の連中ときたら……やれ安全がどうの、人目がどうのって!」

 忌々しそうにそう言うと、再び布袋に手を突っ込みクランベリーを鷲掴むとそれをそのまま口に放り込んで、苛立ちをぶつけるように力強く咀嚼する。

「ーーもしかして何も言わずにそこそこのお値段で売ろうと……?」

 フリシアの言葉に少しだけ考え込んだリエンヌは、声をひそめながらコソリと尋ねる。

「まさか! あー……いや、カビちまったもんと同じ倉庫にあったーーとは説明してないが、訳あり品だからって通常の三割程度の値段で売り出す予定だったんだよ」
「ーーなるほど。 ……実際カビでもないですし、美味しいですし……三割ならうちでも買いたいくらいです」

 そう言いながらリエンヌはクランベリーをパクパクと口に運ぶ。
(冗談抜きで本当に買えないかしら……?)と考えながら。

「だろう⁉︎」
「訳ありだと明言して三割程度なら、なんの問題もありませんよ。 それに、そんなにそこが気になるなら、ラッフィナート商会のような雑貨店ではなく、きちんとした専門店で買えばいいんです」

 ラッフィナート商会の強みは、大量発注、大量買上げにより原価を抑え、質の良いものを他よりも安く売れるところにある。
 つまりは現代で言うところのディスカウントショップのようなものだ。
 もちろん雑貨店なので日用品や消耗品も置いているが、そんな激安の目玉商品に釣られてラッフィナート商会に足繁く通うものたちも、決して少なくはなかった。
 ーーラッフィナート商会は、そんな顧客を満足させ続け、ここまでの成長を見せた店なのだ。

 そして今回、フリシアはその目玉商品の一つにこのクランベリーを使おうとして、「不衛生だ!」と、誰かの反対を受け、こうも“おかんむり”なのだろう。

 それも当然のことで、フリシアが仕入れたクランベリーは相当な量で、それこそ廃棄だ、などということになれば、捨てる手間だけでもちょっとした痛手になるほどだったーー

「その通り! アンタやっぱり分かってるねぇ‼︎」

 リエンヌの言葉にパァン! と小気味いい音を立てて手を叩くと、フリシアは上機嫌でリエンヌを指差しながら嬉しそうに言った。
 しかし次の瞬間、大きくため息をついて肩をすくめる。

「ーー……こんなこと、あたしが言っちゃいけないんだろうがね? 出すもんを出し渋る連中から金を吸い上げたいなら、品質や安全に気を使ってる場合じゃないんだよ。 そもそも「安全じゃ」で商品を捨てようだなんて……」
「えっ⁉︎ あの、捨てるくらいなら下さいません?」
「……え?」
「ーーうちには食べ盛りがいますし……」
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