成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 恐る恐るではあったが、リアーヌがコピーすると決めてしまえば、あとは一瞬だ。
 その一瞬のうちに、リアーヌは『回復』と『風魔法』というギフトを手に入れていた。

(ーー回復も風魔法も結構人気なわけだけど……ーー待って? これ万が一にも今回かかった費用が、借金扱いとかない……よね? 前回だってそうだったし、この話はゼクスーーラッフィナート商会が持ちかけて来た話だもんね⁇ 大丈夫……よね⁇ ーーいざとなったらあのピンクダイヤ売ったろ……)

 コピーが終わり、今度は軽い挨拶をして出て行く二人に、リアーヌも座ったままペコリと軽く会釈えしゃくで返す。
 少しのジェスチャーで、ゼクスに今回の報酬のことを念押ししている二人の姿を眺めながら、リアーヌは心の中でそんなことを考えていた。



 ラッフィナート邸、ダイニング。
 玄関をくぐった瞬間から、ゼクスの家族に総出でもてなされていたリアーヌの頬はこれ以上ないというほどに引き攣っていた。

(たかだか子爵家の令嬢如きに、ラッフィナート商会の重役たちがこの大歓迎って……恐怖しか感じないって……ーーどんな書類であろうとも名前書くのはやめておこう……!)

 そう心に固く誓ったリアーヌ。
 少し前から感じていた満腹感に、ふぅ……と、ゆっくりと息を吐き出しながら、改めて部屋の中に視線を走らせる。

(ーーしかし豪華だな。 流石に街中だからか、大きさだけはうちとかの方が全然大きいけど、煌びやかさでいったら断然こっちだわ。 ……貴族の家より豪華な商家って……ーーまぁだからこそ“国で一番の大商会”なんだろうけどさー……)

 そう考えながら、リアーヌはシャンパングラスに入れられた炭酸水を喉に流し込む。
 その動作につられるように視線を上げーー

(あのシャンデリア高そー……天井にまで装飾してあるし……)

 その煌びやかさに感嘆のため息を漏らすーー……少しだけため息のように感じてしまったのは、上を向いた際彼女の胃袋が少々刺激されたからだろうか……

(……ーーしっかし、ここんちの昼食、全然なくならないんですけどぉ⁉︎)

 リアーヌはそんな感情をーー引き攣ってはいたもののーー笑顔の下に隠しつつ、気力を振り絞ってナイフとフォークに再び手を伸ばすーー

(なんなのこの家⁉︎ そりゃ出される料理はどれもこれも、食べるの勿体無いくらい綺麗だけど、こんなに出てくるもんかね⁉︎ 終わりはいつ⁉︎ 私の感覚だとメイン料理3回食べてるんですけど⁉︎ しかもテーブルの上には、だれが食べる料理か分かんないのがずらっと並べてあるしさぁ……ーー無理だからね! 私自分のノルマだけで精一杯だからねっ‼︎ ーーはっ⁉︎ もしやこれは、沢山の食べ物を用意して、私のマナーをチェックしようというラッフィナート家の罠⁉︎)

 驚愕の表情を浮かべたリアーヌはゴクリと唾を飲み込みながら、カトラリーを握る手に力を込める。
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