上 下
170 / 1,038

170

しおりを挟む

(うちが管理してる花園って、でかい池がある、でっかい公園でしょ……? ーーぶっちゃけあそこって、春しか花咲いてないんだよねー……で、その花が終わっちゃうと、花なんか一本も咲いてない殺風景な公園の出来上がりな訳で……ーー多分、春以外で人が来る目的って池のボートぐらいでしょ……? ーー潔く春以外閉じちゃうのが一番お金かからないんじゃない……? まぁ収入もなくなるわけですけどー……)

「えっと……そもそも春以外に見るものないのが問題でしょ? だったら夏に花が咲く種類の植物を植えるとか、紅葉が綺麗な木をたくさん植えるとか……ーーあとは冬に雪が降ったら幻想的になるような場所を作っておくーとか⁇」

 リアーヌの答えを聞いていたサージュは、顔を顰めながら首を横にふる。

「ーーきっとそれじゃ間に合わねぇんだ。 もっとすぐに人を呼べる案はないか?」
「すぐって……」

(ーーつまりは、もっと観光地っぽくするってこと……公園で観光地って言ったらーー)

「ライトアップとか? 夜の公園に入れる日を作って、花や木、池とかもライトアップしてさ! デートとかで人気出るかもよ⁉︎」

 ナイスなアイデアを思いついたと、前のめりになったリアーヌが軽く腰を浮かせながら少し興奮気味に言った。
 しかしサージュの顔から眉間の皺が消えることは無く、やはり顔を顰めたままため息混じりに口を開いた。

「ーーダメそうだ」
「えー⁉︎ なんで⁇ 絶対綺麗なのに……」

 唇を尖らせながら言ったリアーヌだったが、こう言う時の父の直感に逆らうつもりもないらしく、面白くなさそうにドサリとソファーに倒れ込んだ。
 そんなリアーヌを気づかうようにゼクスが視線を送った。
 ゼクスの視線に気がついたリアーヌは、すぐに尖らせた唇を引き結び、慌てて背筋を伸ばすのだった。

「リアーヌが言いたいことは分かるが、嫌な予感がするからやらない方が良さそうだ」

(ライトアップで嫌な予感って……ーーなんで? ーーお金がかかりすぎる……とか⁇)

「ーー恐れながら」

 サージュの後ろに立っていたヴァルムが控えめに声を上げる。
 その声にサージュやリアーヌだけではなく、ゼクスやリエンヌたちの視線も集まった。

 ヴァルムには、どうしてサージュがリアーヌの案を採用しなかったのか、その理由に心当たりがあった。
 そしてこの場でそれを指摘できる者が自分しかいないであろうことにもーー

「当家の花園は王城と隣接しています。 どちらも広大な敷地を有しているためにかなりの距離があるように見えますが、敷地だけで考えるならば隣り合わせなのです。 ーーその隣り合っている施設が、夜間に不特定多数の人間の出入りを自由にしたーーとあっては、何が起こらずとも当家の責任を追求するが大勢出てきましょう……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

処理中です...