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「え、違うんですか? じゃあーーあ、あれじゃない? 「俺二匹とったからあれはお前にやるよ」的な! きっと感謝して友達になってくれるよ」
「ーーああ」

 そんな姉弟の会話にゼクスは頭痛を覚えながら乾いた笑みを漏らすのだったーー

 そもそもこの狩りの趣旨は“交流”である。
 狩りとは銘打ってあるが、獲物など捕まえなくても良いーーというか、捕まえた獲物を持って帰ろうとする者など、ザームの他にはいないだろう。
 獲物を見つけるまでに協力し合い、意見を出し合い狩りの手順を踏んで、獲物に弓が当たろうと当たらなかろうと、その結果に一喜一憂する……そしてその人物の人となりを見て、距離感を測るーー
それこそが大きな目的であったのだがーー
 なまじ狩りに慣れているザームであるからこそ、その考えに至れない……というよりも、その考えを理解できないのだった。

 笑い終わり「はーあ……」とため息のようなものを漏らしたゼクスに強い視線が注がれた。
 ゼクスはその視線の主を探るまでもなく、自分に視線を向けているのかが誰なのか理解できた。
 耳では姉弟が、ああでもないこうでもないと好き勝手に言っているのを聴きながら、ゼクスは軽く鼻をいじる。
 そして未だに強い視線を送り続けているヴァルムに、チラリと視線を走らせた。

「ーーゼクス様。 狩りの日のご予定は?」
「……開けときまぁーす」

 有無を言わせない笑顔でたずねられたゼクスは首をすくめながら答えるのだった。

「そんなに心配しなくても……あの人が決めたことなんだから大丈夫よ」

 リエンヌが呆れたように笑いながら言うが、言われたゼクスとヴァルムたちの心の声は『それはそれ、これはこれですよ……』と一致していた。

 いくらサージュの運が良いと言っても、どうにもならないことがあったからこそ、貧乏な時代があったのだ。
 そしてーー運はあくまでも運であり、すでに決められた絶対の未来では無い……
 そのことをきちんと理解しているヴァルムたちであったからこそ、打てる手は全て打っておくべきだと考えていた。

「ーーご迷惑でなければ、ぜひご一緒させてください。 私も未来の義父殿や義弟殿との親睦を深めたいので」
「あらそう? 迷惑なようなら無理してはダメよ⁇」
「とんでもございません」

 ゼクスはそう言うと恭しくお辞儀をした。 そして顔を上げるといたずらっぽくニヤッと笑って見せた。
 そんなゼクスの態度にリエンヌはふふっと笑うと、未だに見当違いな意見を交わし合っている姉弟に向かって口を開いた。
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