成り上がり令嬢暴走日記！

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　ボスハウト家所有の馬車の中。
　リアーヌとゼクスは隣り合わせに座りながら談笑していた。

　両親やヴァルムと夏休暇の予定について相談したいと言うゼクスの申し出を聞き入れたリアーヌが家へと招いた形だ。

「そう言えば、俺この休暇中に領地視察に行く予定なんだけどーー」

　ゼクスはそう言いながら、視線でどうする？　とたずねるようにリアーヌを見つめた。

「ーーフルーツが美味しいって噂の領地ですね⁉︎」

　ゼクスの意図を全く読み取らなかったリアーヌは瞳をキラキラと輝かせながら言う。

「うん。　噂じゃなくて事実だけどーーいや、そうじゃなくってね……？」

　輝くリアーヌの顔を見つめながら、困ったように苦笑を浮かべるゼクス。

「ーーうちの家族はみんなフルーツ大好きです！　どんなのでも食べますし、余るようならジャムとかに加工するんで！」
「……あ、お土産の量の話してる？」
「……違うんですか？」
「まぁ、そうなったらたくさん買ってくるけどね？」
「太っ腹！　素敵‼︎」

（この世界のフルーツってどれも高いんだよねー。　多分ハウス栽培とかその辺の技術が無いからだと思うけど……ーーなのにそれを沢山とかっ！　お金持ちってやっぱり違うんだんだなぁ……ーーうちじゃ未だにデザートの時にちょびっと食べられるくらいだしな……ーーま、毎日デザート食べてて文句言ったら怒られてちゃいそうだけどー）

　ボスハウト家の家計事情ーー特に家族の食事については、母のリエンヌの意向が最大限に反映されていた。
　そのため、裕福な貴族家庭でよく見られるような、余るほど大量の食事を用意することも、必要以上に豪華な食材を仕入れることも、そんな無駄な出費をリエンヌが許すことはあり得なかった。
　ーーしかし誰もリアーヌにこの事情を説明していなかったために、リアーヌはボスハウト家が、そこまで裕福なわけではないのだと、勘違いをする一因になっていたわけだが……



「そうじゃなくって、リアーヌは行かない？　まぁ、場所が場所だから嫌なら嫌で全然構わないんだけど……ーーこの前、子爵夫人に一緒に行ったほうがいいーーみたいなことを言われてただろ？　だから行くつもりがあるならその予定も詰めたいなと思って」
「ーーあー……　なんか私にも、良いことがあるって言ってましたね？」
「もちろん正式な許可が降りればの話だけどね。「婚約中に視察旅行だなんてダメに決まってるー！」って言われちゃうかもだし」

（あー……そういえばこの世界って、婚約中にイチャイチャし過ぎてもダメなんだった……ーーそう考えると、この世界の女の人の結婚事情、難易度高すぎじゃない……？　だって二十台前半までにお嫁に行かなきゃ行き遅れってバカにされるのに、婚約中は手を握ることすらハレンチ案件ーーにもかかわらず結婚したらすぐに跡取りマダー？　されるんでしょ……？　ーーしかも婚約破棄されて不名誉背負うのは大体が女性だしねー……）