成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 そんな男性の肩を少々乱暴に叩きつつ、やや引き攣った顔でリアーヌに愛想笑いを浮かべて見せる連れの男性。
 こちらの男性は、短髪の男性よりもやや小柄で、白い髪の中に黒い髪が入り混じったーー白虎のような色合いの髪が特徴的だった。

「つまりは……俺たちとどっか行かねぇか? ってお誘いだ」
「そう! 行こうぜ? もちろん俺たちが奢るしさ!」

 そう言ってニカっと笑う短髪の男性だったのだが……
 リアーヌの中の“なにか”が警告を発していた。

(なんか……変な感じ。 これっていわゆるナンパってやつだと思ってるんだけど……違うのかな……? ーーいや待って? ……普通、二人組でナンパするなら二人組に行かない⁇ だってこれじゃ確実にどっちかボッチになるよ⁇ ーー怪しすぎる……)

「……お腹いっぱいなんで」

 リアーヌが言ったこの言葉は誘いを断るためのものであったが、リアーヌの本音でもあった。

(あれもこれも食べていいって言われて、テンションアゲアゲでお腹いっぱい食べちゃったよ! 正直、ちょっとスカートがキツイよ‼︎)

「ーーじゃあ紅茶の美味しい店行くか! この先にいい店があるんだよ、な?」
「ああ、あそこか。 いいんじゃないか? すぐそこだし」

 そのやりとりに、やはりリアーヌは違和感を感じ取る。
 そして、なぜか幼い頃食糧確保を兼ねて行った、川遊びのことを思い返していた。

(……なんか、川魚を罠に追い込んでる時の父さんたちみたいな顔してる……ーーあれ? その場合、川魚は私なのでは……⁇ ーーもしかしてこれ……ナンパ詐欺というやつなのでは……⁇)

 その可能性に気がついたリアーヌは、ゴクリと唾を飲み込むと、いざという時走って逃げられるように、男たちとの間に距離を取るべくジリジリとその立ち位置を微妙に変化させる。
 しかしリアーヌが動くたびに、胡散臭い笑顔を浮かべた男たちも場所を移動して、リアーヌと大通りの間に立ちはだかるように動くのだった。

(ーーあ、これ決定だわ。 このまま着いて行ったら、妙な商品を買わされるか宗教の勧誘を受けるか、マルチ商法に勧誘されるかのどれかだわ。 ……もしかしたらこの世界特有の詐欺があるのかもしれないけど、これ絶対に普通のナンパじゃないわー……)

「あの、確認なんですけども」

 リアーヌはとりあえず時間を稼ぐことを目標に、あわよくば騒ぎになって警邏隊けいらたいがやってきてくれることを期待して、少し声を張って男たちに話かけた。

「おう!」
「……相手は私では合ってます?」

 首を傾げながら言ったリアーヌに、短髪の男も首を傾げながら答える。

「……そりゃ声かけてっからな……?」
「……その、自分で言うのも悲しいんですけどーーもっと可愛い人やスタイル抜群の人が他にたくさん……」

 居ますけど……と通りに視線を流すリアーヌ。
 その視線に釣られるように振り返った二人の男は、通りを楽しそうに往来する華やかで愛らしい女性たちの姿をしっかりと確認することになった。


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